インターホン大手の業績が過去最高。“最大のライバル”の失速が背景に
半導体不足の原因となった3回の火災
半導体は産業のコメと言われ、現代社会に欠かせないものとなりました。スマートフォン、自動車、LED電球まで暮らしに必要なあらゆるものに活用されています。もともと呼び鈴を鳴らすだけのものだったインターホンも、テレビをつけるなど利便性を高めた結果、半導体なくしては成り立たないものになりました。
2020年から2021年にかけて、日本は未曽有の半導体不足に見舞われました。その原因のひとつが製造工場の火災です。2020年7月に日東紡の福島第2工場で火の手が上がり、半導体のプリント基板に用いられるグラスファイバーの供給がストップしました。
3か月後の10月には旭化成マイクロデバイスの延岡工場でも火災が起こり、音響関連のセンサーなどに使う大規模集積回路の製造が止まってしまいます。不幸はさらに続きました。2021年4月にルネサスエレクトロニクス那珂工場も火の手に包まれました。この工場で生産される300mmのマイコンは他の工場では代替生産ができない特殊なものでした。それが供給できなくなったのです。
パナソニックのインターホン供給に遅延が発生
パナソニックは2021年5月に「インターホン・ドアホン」供給のお知らせを出しました。半導体需給逼迫により、生産遅延が出ているというものです。一方、アイホンは火災の影響を受けているものの、商品の提供に時間がかかる場合があるとの表現に留めています。国内のインターホンはアイホンとパナソニックでシェア9割を握っていると言われています。
インターホンが足りないという理由でマンションやアパートの工事を遅らせるわけにはいきません。現場監督や物件のオーナーからすれば、パナソニックの供給がストップすれば代替品としてアイホンを選ぶのは当然です。
パナソニックは2022年3月期の売上高を前期比9.0%増の7兆3000億円、営業利益を同43.1%増の3700億円、純利益を45.4%増の2400億円と予想しています。会社全体としては極めて堅調です。数百億円のインターホン事業は誤差の範囲です。
半導体不足を味方につけ、受注数を伸ばしたアイホン。取引先を広げて更なる拡大につなげることができるのか。期待が高まります。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>