首位を奪われたアサヒビール、復活の快進撃。生ジョッキ缶、マルエフがヒット
アサヒビールは2021年9月17日に“マルエフ”の名で親しまれる缶ビール「アサヒ生ビール」の販売を一時休止すると発表しました。
想定を上回る注文に商品供給が追い付かないため、一時休売せざるを得なくなったのです。出荷再開については11月の予定ですが、アサヒビールが休売せざるを得なくなったのは、2021年に入って2回目。4月21日にも「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」の一時休売を発表していました。
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アサヒは2020年の国内ビール出荷数において、競合のキリンに追い抜かれていました。立て続けのヒット商品に恵まれ、アサヒは再び首位に返り咲くことはできるのでしょうか?
ビールではなく“ビール類”で勝負をかけたキリン
ビール単体の出荷数でみると、アサヒは他社を圧倒しています。2020年の出荷数は2019年比22%減(主力のスーパードライの減少率)となったものの、6892万箱を出荷しています。キリンは3633万箱、サッポロが2453万箱、サントリーが2008万箱です。アサヒは2位のキリンとの間に3300万箱近い差をつけています。
しかし、発泡酒や第3のビールを含めたビール類で比較をすると、キリンがトップに立ちます。キリンは1億2941万箱で前年比4.5%の減少に留めました。アサヒは2020年から出荷数を公表していないものの、ビール類の売上は前年比16%減少しており、そこから推計される出荷数は1億1925万箱。サントリーは11%減の5675万箱、サッポロが8.1%減の3995万箱です。
アサヒの強敵キリンが、ビール単体ではなくビール類で強みを発揮しているのは、発泡酒や第3のビールへと主軸を移したためです。それは消費動向に合わせたものでした。
ビールは1994年度の出荷数をピークとして緩やかに下降しています。2002年度ごろまでその穴を発泡酒が埋めていましたが、2003年度に発泡酒が増税になったことで人気は衰えました。発泡酒に代わるものとして、第3のビールが次々と市場に投入されました。
飲食店への依存度の高さが打撃に
新型コロナウイルスによる新常態は、アサヒにとって2つの点で予想外だったといえます。
1つ目はアサヒがコロナ前からビールへの依存度が高く、2018年の段階でアルコールカテゴリー別で全体の56%を占めていたことです。発泡酒や第3のビールなど、ビール類で見ると74%を占めています。一方でキリンのビール類に、ビールが占める割合は35%。アサヒはビール依存度の高さが裏目に出たといえます。
2つ目が飲食店などの業務用への依存度も高かったことです。アサヒの販売チャネルを見ると、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、酒のディスカウントストアを除く、業務用酒販店とその他の割合は52%でした。飲食店のアルコール提供制限を真正面から受けたのです。
2019年のアサヒのビール類の出荷数は1億4196万箱。キリンは1億3507万箱でした。コロナ禍で飲食店のビールの消費量が激減したことに加え、家庭で楽しむビール類の嗜好が多様化したため、2020年にアサヒはキリンにシェアを奪われたのです。