社長の愛人へのお手当振込まで社員の仕事。ゲーム会社の銭ゲバ社長
「今度は『こんなビジネスを考えて、雑誌に載せたい。それにあたって、儲け話に関心をもってくれる企業と出資者を明日まで探せ』とまた眠る時間を与えずに働けとLINEで指示されたんです。
そこで、またIさんにLINEすると『明日は社長が愛人に会う日だから、テキトーにごまかせばいいよ』と。愛人を囲っているだけでなく、愛人と会う日まで社員に筒抜けだなんて、一体どんな会社なんだ? と、驚きの連続でした」
やっとのことで『TOKU 第2号』を完成させた、江口さん。
しかし、今度は「取材したい人たちを僕の前に連れてこいと言ったはずだ。どうして連れてこないんだ」と社長がヒステリーを起こしたとか。江口さんは、次第に自分の仕事が社長の欲を満たすためだけのものだとわかってきます。
最も困った仕事は「愛人への振り込み」?
「さらに会社の事務員が退職すると、電話対応も私がやることに。すると電話は数社のお得意様だけで、あとはキャバ嬢やら、スナックのママから営業の電話ばかり。とうとう『ここは会社なので、電話は社長の携帯にかけてください』と、突っぱねてしまいました。
すると、キャバ嬢やママたちから『社長の携帯に電話をしてもつながらない』とか『LINEをブロックされた』とか、文句のオンパレード。しぶしぶお水の女性たちの伝言をメモしたのですが、やるせなくなりましたね」
一番困ったのは、愛人へのお手当の振り込みをさせられたことだそうです。
「銀行から直接振り込みにすると、税理士から口うるさく指摘されるため、親族の会社を取引先として振り込み、私が親族会社に行ってそのお金をもらい、そのまま銀行に行って、愛人に振り込むんです。しかもタクシーではなく、電車移動。ケチな社長は交通費まで削減するんです」
そのうち、江口さんがもっとも頼りにしていたIさんが辞めてしまいます。今度は、「Iの代わりに相撲などタニマチとの付き合いに同行してよ」と言い放つ社長に、江口さんはついにキレて、会社を飛び出してしまいました。
「これって仕事と何の関係があるんですか? 絶対に嫌です」と言って、転職活動を行った江口さん。今ではモンスター社長との縁も切って、念願のゲーム制作会社に入社し、好きなことを仕事にしているそうです。
<取材・文/夏目かをる イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>