経済効果300億円の人気アニメ「おそ松さん」ヒットの理由。監督と構成作家が語る
伝説的なギャグマンガ家・赤塚不二夫の生誕80周年記念作品として放送されたTVアニメ『おそ松さん』。伝説に恥じることのない衝撃的なギャグが話題を呼び、Blu-ray&DVD第1巻は合計約12万枚を売り上げたほか、各種タイアップや関連グッズも盛り上がり、その市場規模は300億円とも言われる。
その後、テレビアニメの第2期に劇場版『えいがのおそ松さん』(’19年)の公開と人気爆発。現在放映中の第3期について、監督の藤田陽一氏とシリーズ構成の松原秀氏に話をうかがった。
シナリオは常に“新ネタ作り”の感覚!?
――今期はコロナ禍でアニメ業界的にも大変な時期に製作が始まったのでは、と思います。世間の常識や、表現に対するアリ・ナシといった感覚もこの一年でガラッと変わり、新キャラAIロボットの「オムスビ」はそういった社会のルールに切り込んでいるようにも感じましたが、お話を作るにあたり気をつけられたことはありますか?
藤田陽一(以下、藤田):特別にコロナだから話し合ったといったことはなかったと思います。ただ、年々そういうルールは厳しくなっていると感じているので、ネタによってバランスは気をつけていますね。
松原秀(以下、松原):シナリオは優先順位をつけながら作っていて、『おそ松さん』の場合、まずは「ネタ」や「コント」を優先しています。自分がお笑い畑出身だからというのもあるんですが、常に「新ネタ作り」の感覚なんです。
オムスビで言うと、最初に新キャラでロボットでAIという縦軸の紹介を1クール目でやっつけようとネタを作っていました。“今の流行りに焦点を当てる”みたいな部分については、観る人によって捉え方は本当にそれぞれなので「2番目とか3番目とかに拾ってもらえればいいや」くらいのあんばいでしたね。
藤田:見え方によってはそう見えるかもしれないくらいのバランスで、特別に主張しているわけではないけれど、「今」をベースにしている分、人によって切り取るところが違うのかもしれないです。
「神宮球場で野球を見ながらネタ出し(笑)」
――ネタ作りでは、引っ張る役、ブレーキ役などに分かれているんですか?
松原:どちらが引っ張るとかはないですね。持ち寄って「これ使えるから広げてみよう」って感じで。前は神宮球場で野球を見ながらよくネタ出ししてました(笑)。ちょっと特殊なネタ出しかもしれないんですが、阪神がどうの、ヤクルトがどうのと全然違う話しながら、急に「じゃあ、トド松が……」って会議が始まるんです。
藤田:確かに。ずっと考えてはいるんですが、そればっかりだと煮詰まるので、そういうほうがやりやすいんですけどね。違う視点も生まれますし。
松原:でも、はたから見たらいつ会議が始まっているのかわからないので、「早く会議始めてくれませんかね」って空気がどんどん醸し出されて。