明らかに上司の様子がおかしくなって

　その翌日出社すると、明らかに上司の様子がおかしく、事務所に入ってくるなり物凄い顔でニラまれて、挨拶すらできない雰囲気だったとか。

「前回の件で、すでに冷遇されてましたが、その比じゃないぐらいに凍りついた空気が漂っていて……。それで営業が始まったと思ったら、課長がその日のアポに同行してきて、商談が終わるやいなや、一つひとつの言葉選びからトークの流れまで、全否定されました。

　いつものクールさは全然なくて、やたら感情的なのが気になったんですが、また大野のやつがチクったに違いないと思って、同期たちとどうやって吊し上げるか考えました。それで先輩に相談したところ『馬鹿なことするなよ』と言われました」

　先輩が止めたのは、大野さんたちの身を案じてのことでした。

許されざる隠し事が発覚

「実は上司と大野が付き合っているというんです。部内ではそんなそぶりは微塵も見せてなかったので驚きましたよ。同棲までしていたそうでした。腹が立つのが、大野のやつは飲みの席で、散々自分たちに上司の悪口を聞きたがっていたことでした。それで彼女である課長に告げ口していたのかと思うと、ムカついて仕方ないですよ」

　結局、森田さんはあまりの居づらさに会社を辞めることに。それからしばらく経った頃、大野さんから上司と結婚する旨の報告と、結婚披露宴の2次会への招待メールが届いたそうです。

　その後、あの二人と仲が改善されたわけでもないので、もちろん行かなかったという森田さん。どういうつもりで招待したのかわけが分からず途方にくれたそうです。

＜取材・文／和泉太郎　イラスト／田山佳澄＞