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「母にも暴力を…」息子が家業を継いだら、父親の態度がなぜか豹変

学び

母にも暴力を振るうようになった父親

 意味がわからなかった後藤さんは、裁判を起こして金を取り戻すべきだと説得しますが……。

「父は話の途中で席を立って、どこかに行ってしまいました。その後も説得を試みましたが、父は私を避けるようになって、そのうちに顔を合せることすら避けるようになりました」

 それでも説得を続ける後藤さんでしたが、次第にお父さんの様子が豹変してしまったそうです

「母の話によると、ひとり部屋に籠もって奇声をあげるようになって、母にも暴力を振るうようになったんです。それまで母に手をあげることなんてなかったのに。明らかに父はおかしくなってしまいました」

元に戻った父。真意は不明のまま

悩む男性

「それからも父から真意を聞けないままでした。了承を得ずに弁護士に依頼して、話を先に進めようかとも考えました。でも、それをすれば家族の関係はどうなってしまうのか。悩みに悩んだ挙句、これ以上、手を出さない方が良いと思いました。横領された金を回収することと父が壊れてしまうことを天秤にかけた上での苦渋の選択です」

 後藤さんの考え通り、横領の件を口にしなくなったところ、お父さんは以前の様子を取り戻していきます。しかし、どうしても横領された金を取り戻すことも考えてしまうのだとか。

「踏み込まないと決めたものの、納得はできないですよ。なんとか家業のほうはやっていますが、厳しい状況は続いていますし。何よりも一番納得できないのは父です」

 後藤さんのお父さんは、なんと今でもAさんと酒を飲みに行く仲にあるとか。『今日は遅くなるからな』と嬉しそうに告げて、Aさんと飲みに出かける背中を見ていると、あまりの不条理さにため息しか出ないそうです。

<取材・文/和泉太郎 イラスト/田山佳澄>

込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

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