大手メーカーで挫折した慶應生が語る「学歴ブランドのプレッシャー」
学歴のプレッシャーについて、岡本さんはこう振り返ります。
「僕は僕で、座学ができたのは慶應卒だったからじゃない。営業ができないのも、慶應卒かどうかは全然関係ないのに。なんとかギリギリのところを続けていましたが、とうとう自律神経を壊し、2年目で退職することにしました」
2年で退職して、向かった働き先は?
大野さんはすでに別の企業への転職を決めたそう。学歴プレッシャーに苛(さいな)まれた彼は、どのような企業への転職を希望したのでしょうか。
「転職を機に、大学が楽しかったのは、自分と似たような性質のある友達がたくさんいたからだと気づきました。メーカーの人たちはちょっと体育会系な人が多くて、立ち回りが上手で。そんな人たちと同じフィールドで戦おうとしていたのが、間違いだったのかなって。だから、転職先はずっと好きだった音楽関係の職場にしました」
転職時、大野さんは「好きなものが一緒の人となら、気持ちが分かり合える可能性が高いんじゃないかなぁ」とぼんやり思ったそうです。
「この業界では前職ほど学歴を活かすことができないかもしれません。1年で大手企業をやめたことも、履歴書には残ってしまいますしね。今考えると、学歴を使って入った職場では学歴を見られるのは当たり前。でも、この転職先はたぶん、学歴ではなく、僕そのものを見てくれるんじゃないかなあと思っています」
そう語ってくれた大野さんの表情は、どこかすっきりとしていました。学歴を活かすということは、その学歴相応の期待を持たれるということ。そこに過度の期待を持たれすぎることは、必ずしも自分のためになるわけではない、ということですね。
<取材・文/ミクニシオリ イラスト/三澤祐子>
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