満員電車での通勤が不要に…コロナ後の「新しい働き方」は定着するか?
新型コロナウイルスの猛威は“実体経済”を蝕み、今後は資金繰りに窮する企業や個人事業主のみならず、会社員にも多大な影響を及ぼしそうな情勢だ。価値観や生き方すら変えかねないアフターコロナの荒波をどうかいくぐればよいのか――賢人たちに生存戦略を聞いた。
今後は“仮想ファースト”に
世界経済の前提が大きく変化するコロナ禍で「まるで予言の書!」と、注目されている本がある。デジタル化する世界の本質を解説した『アフターデジタル』だ。
著者のひとりであるIT批評家の尾原和啓氏はこう語る。
「本来ですと10年から20年かけて起きるはずだった社会の進化が、図らずもコロナによって2~3年で一気に進むことになりそうです。近代マーケティングの父、コトラーが説く『ニューノーマル=新しい常態』な世界の到来です。
古い価値観=オールドノーマルは転覆し、今後は“仮想ファースト”な世界がスタンダードになると私は解釈しています」
「どこでも誰とでも働ける」
仮想ファーストとは、具体的にどういうことなのか。
「デジタルになると、本質的な価値が剥き出しになります。たとえば、この1か月、強制的にリモートワークに転換して思ったよりも仕事ができているという人たち。家賃の高い都市に住み、満員電車での通勤がなぜ必要だったのか? 全員が同じ空間に揃う意味は? こうした“過去のフィクション”に我々がいかにとらわれていたのかを実感しているはずです」
働き方改革を例に挙げるまでもなく、技術的にも実はすでにニューノーマルな世界は到来している。にもかかわらず、我々は古いルールに縛られていただけ――そう言われれば、目から鱗が落ちる。
「これまでは仕事が住居を縛っていたので、『オンは都市で、オフはリゾートで』過ごすスタイルが常識でした。でも、都市でソーシャルディスタンスを保つことに注力するより、地方や郊外、リゾートなど『どこでも誰とでも働ける』ほうが圧倒的に効率がいい」