醜聞に対して社長は「知らぬが仏」

「高梨部長は、例の電機メーカーの部長と不倫しているという噂でした。最初は誰かがやっかみで流した『ただの噂でしょ』と思っていたんですが……」

　しかしながら「人の口に戸は立てられぬ」とはよく言ったもので、「温泉旅行に行っている。しかも頻繁に」という、具体的な話まで徐々に聞こえてくるようになります。

「取引先の人から聞いた話だと2人は同じタイミングで会社を休むことも多く、不倫は事実のようでした。社長も知っていたはずですが、高梨部長は目に見えて数字を出してくるので、注意や叱責は全くしないようでした」

　不倫が事実だと知り、ドン引きする松浦さん。こうなってくると90%を占める彼女の受注成果も怪しくなってきます。しかし、社内には高梨部長に追従する社員もいました。

“キラキラ女子”が続々と…

「それまでとは感じの違う女子社員が入ってくるようになっていたんですが、彼女たちは露骨に高梨部長を支持していました」

　これまでは、どちらかといえば物静かなIT女子が採用されるケースが多かったのに対し、プログラミングなんてまるで興味がなさそうな、“キラキラ女子”がSEとして入社するようになったのです。

「彼女たちは、もちろん女子部隊に配属されました。高梨部長の一存で採用された子たちでした」

　そんな女子部員が増えていくに従い、松浦さんは「自分が浮いた存在になっていくように感じた」と言います。そんな折に、個人目標を設定する時期がやってきました。そこで高梨部長から驚くことを告げられます。

「『あなたたちの来季の目標は、女子力の向上にしましょう』。そう言われたんです。なんかもう愕然としましたね」

　定量化することもできない目標を掲げられ、困惑する松浦さんたちでしたが、例のキラキラ女子達からは喝采の声が上がりました。