HIP HOP界を牽引する「脱サララッパー」。デビューのきっかけは大ケガ
入院して自分の置かれた状況を見つめ直すことができた
――(笑)。その先で、ラップ1本に賭けようと思ったのはいつだったのでしょうか?
黒ぶち:わりとつい最近で、2018年6月からですね。じつは、2ndアルバム『Live in a dream!!』を2017年に制作していた頃から、二足のわらじを履くことに限界を感じ始めてはいたんですよ。
――だんだんと自分自身の岐路がみえてきていたんですね。退職されたきっかけはあるんですか?
黒ぶち:通勤途中に自転車で転んで、手術が必要なほどの大ケガを負ってしまって。人生初めての入院も味わい、それまでは最高でも4連休までしか経験したことなかったはずが、仕事を3か月近く休むことになりました。初めの1週間は寝たきりで、仕事はもちろんラップすらできないほどの状態。その後も徐々には動けるようになったものの、休職期間中に「音楽で生きていきたい」という意志を確かめるためにもロンドンへ渡ってみたりしていくなかで、ふと辞めようと思ったんですよね。
管理職でもあったし、人手不足もあったので職場からは引き止められましたが、自分なりには「また、どっちつかずで一本調子の生活に戻るわけには」という葛藤もどこかには抱いていたので、ラストチャンスとして「ラッパーとして生きていこう」とようやく決断することができました。
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そこから約1年後に『フリースタイルダンジョン』で“3代目モンスター”の称号を手に入れたTKda黒ぶちさん。
インタビューを通してうかがえたのは、偶然とも、必然ともいえる他人との出会いから築いてきた人生観。いかなる場面でも、音楽やヒップホップ、ラップへの思い入れを見失わずに歩んできた生き様は、毎日を生きる同世代のみなさんのヒントになるかもしれません。
<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>