「レンタルなんもしない人」が語る、働かずに価値を生む稼ぎ方
依頼者の相談事にもアドバイスはしない
いつでもどこでも、レンタル氏はなんもせずに存在するだけ。依頼はどんなものが多いのだろうか。
「世の中には、アドバイスを求めるより『ただそこにいてほしい』『ただ話を聞くだけでいい』という人がいるということを初めて知りました。依頼は悩み相談もありますが、僕自身は他人にアドバイスをするのは嫌いなんですよ。口を出すということは、相手の人生に責任を負うことになってしまうから。あとは僕の意見を求めているのではなくて、話すことで考えがまとまるという人もいます」
なかには自身の悩みをワードやパワーポイントで事細かな資料を作成し、語るだけの人もいるとか。
「まるでプレゼンみたい。その作業をすることで、頭の中が整理されるらしいです。ほかには、10人以上の人格をもつ解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の方とお会いしたんですが、それぞれ別の人格で僕に依頼をしてくれることもあって。僕は相槌を打ちながら聞いているだけです」
また、時にはこんな珍依頼も舞い込んでくる。
「『普段は絶対に言えない不倫相手の名前を、人前で言ったら自分がどんな感情になるのか知りたい』という依頼もありました。僕にとってはただの他人の名前なので、聞いてもなんの感情もわかずに『へぇ~……』で終わる。
『言ってみてどんな感情になりました?』とも別に聞かない。“なんもしない”わけですから。相手も聞いてほしいわけじゃないので、自然と次の会話に話が移る。それくらいの感じがラクですね」
褒められるのもあまり好きではない
そう淡々と語るレンタル氏だが、実は繊細な一面もあるという。
「もともと人からのプレッシャーに弱いところがあって。仕事で怒られるのはもちろん嫌ですが、褒められるのもあまり好きではないんです。褒められると自然と次の仕事のハードルが高くなりますよね。
でもこのサービスは、最初から『なんもしない人』と言っているので、過度に期待されなくてラクです。沈黙も苦にならないし、相手も僕になにかしてほしいわけじゃない。“なんもしない”からこそ関係が成り立っているんだと思います」