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いい大人になるために“挫折体験”は本当に必要なのか?

コラム

ダースレイダーの“挫折体験”

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――若いころ、例えば20代とかで挫折を経験したことはありますか?

ダースレイダー:挫折ねー……。なんだろな。例えば告ってフラれるとかっていうのは、いくらでもあるけど(笑)。20代のときに、川崎のクラブチッタっていうところで僕がイベントを企画したことがあったんだけど、当時はヒップホップ的にはそこはかなり規模のデカい会場だったんです。

 大抵、大きいイベントっていうのは、僕らの先輩世代とかがよく呼ばれて出てたから、遊びには行ってたんですけど、まあ、僕らにはお声は掛からないわけ。イベントに呼ばれないから、呼んでくれるのを待つんじゃなくて、呼ばれない奴らで集まってイベントやろうってことで企画して、25歳のときにイベントを打ったんですけど、マックスで80万くらい赤字出しちゃって(笑)。一晩での赤字ですからね。

 まったく客も来ないし、タイムテーブルも一人でやってるからグチャグチャで、怒っちゃう人とかもいて、まぁ大変だったんです。もうこれは窓から逃げるしかないんじゃないかと思ったくらい(笑)。

 それもあって、時間管理と進行とブッキングとか、全部を一人でやるのは無理だなとわかった。そのときは、クラブチッタ側のマネージャーさんとかがいろいろ知恵を貸してくれて、これはこの売上をまけてやるよとか、この機材代を無しにしてあげようとか、いろんな助けをしてくれて、なんとかなりましたけど。

 動員数でみたら大失敗を何回かやってるんですけど、やっていみてわかったことがたくさんあるので、結果としてはやってよかったと思ってます。

“メジャー契約解消”は挫折か?

ダースレイダー:あとは、メジャー契約を切られたとき、メジャー契約を切られるって人によっては挫折とか、終わりだって思う人もいるかもしれませんけど、僕はそのとき、これまでの制作会議とかで話してたことって、どこまで自分でできるんだろう、会社に頼らずにできるんじゃないか?って発想で、インディーズレーベルの「Da.Me.Records」っていうのを立ち上げて、自分の台所でレコーディングして、1000円で売り出すっていうのをやってみたわけ。

 そしたら、ここまでは人に頼らずにできますっていうのと、ここから先は流通会社の人にお願いしないとダメだとか、これはデザインの人にやってもらうべきだとか、こっから先はバイヤーさんにとか、分担っていうのができた。

 そのメジャーにずっといたら、全部やってもらっちゃってるから、まったく見えてなかったと思うんですけど、それから外れたことで、だいたいの仕組みが分かったっていうのもあったんで、そんな経験ができて良かったと思ってます。

 あいつはメジャーだったのに、インディーズに落ちてもう終わりだって言いたがる人もいるかもしれませんけど、「案外パワーアップしてます」ってこともあるしね。それは挫折じゃない。そう思いますね。

<構成/サジェリコフ 撮影/山口康仁>

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

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