アメリカ社会を映す?今こそ観るべき“社会派”マーベル映画3選
女性のエンパワーメントの時流に乗る
■『キャプテン・マーベル』(3月15日公開予定)
記憶を失った女性ヒーロー、キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)が主人公の本作。自在に姿を変える正体不明の敵に狙われるうちに、彼女の隠された秘密が明らかに……。過去のトラウマや孤独を乗り越えて成長していくキャプテン・マーベルの自己発見と再生の物語です。
マーベル映画作品には数多くの女性ヒーローが存在しますが、女性単独ヒーローが主演するのは本作が初めて。その背景には、2017年から叫ばれ始めた「#MeToo」や「#Times Up」があります。性的被害告発から始まったこれらのムーブメントは、男女賃金の格差、ジェンダーステレオタイプ、ボディ・シェイミング(体型への批判)、そして女性の地位向上まで世界の関心を高めました。
そんななか、DCコミックの女性ヒーローを主役にした映画『ワンダーウーマン』(’17)が世界的な興行成功をおさめ、2018年に公開されたマーベル映画『ブラック・パンサー』の強い女性キャラクターが人気を集めたことから、マーベルのなかでも、男性と同等の主役級の女性ヒーローが待ち望まれていたのです。
映画内でキャプテン・マーベルが放つ言葉のはしばしには、“女性らしく”というジェンダーから自由になろう、私たちには白馬に乗った王子様なんて必要ない、という女性のエンパワーメントを感じる作品に仕上がっています。
社会的ブームになったアフリカ系アメリカ人ヒーロー
■『ブラックパンサー』(’18)
アフリカにある架空の国・ワカンダの王子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は父の死後、国王の座を継承。同時にヒーロー、ブラックパンサーとしての責任も果たすことになりました。ところが、国内外の敵から襲われて、ワカンダの伝統や父の教えに疑問を抱き始めるティ・チャラ。次第に彼はアイデンティティに目覚めていきます……。
1960年代にマーベルコミックに登場したブラックパンサーは、初のアフリカ系アメリカ人の主役級ヒーロー。本作は登場人物のほとんどがアフリカ系アメリカ人で占めるという画期的なキャスティング。ブラックパンサーを支える軍隊は女性で固められており、“アフリカ系アメリカ人”と“女性”という二重のマイノリティと男女平等を打ち出すことで、“多様性”を実現しました。
ブラックパンサーがアイデンティティに悩む姿は、アフリカ系アメリカ人たちが直面する人種差別を訴えつつも、人種を超えて、自分のルーツやアイデンティティを見出すことができない人々の心を打ちました。
さらに、ストーリーに“少年兵士や人身売買”という世界的問題や、“国への忠誠心vs自分の道徳心”という普遍的な疑問を問いかけている点も、全米興行収入で歴代3位、全世界興行収入で歴代9位というメガヒットに繋がったのかもしれません。