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“日当2万6400円”内閣参与を、石原伸晃氏が辞任した経緯。参与は落選者の失業対策なのか

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 先の衆院選では、いくつか注目された選挙区があります。そのなかでも、公示前からドタバタがつづき、大番狂わせともいえる結果になったのが東京8区です。衆議院選が小選挙区制へと移行した1996年から、東京8区は自民党の石原伸晃議員が議席を堅守。そのため、石原王国とも呼ばれる地域になっていました

石原伸晃

阿佐ヶ谷駅前で街頭演説をし、集まった人たちに支持を訴える石原伸晃候補。力及ばず、落選

 今回の衆院選は、そんな石原王国に激震が走りました。衆院選全体の結果を見れば、自民党の圧勝。でしたが、石原候補は小選挙区で敗北。それだけではなく、比例でも復活できなかったのです。まさに、石原候補の落選は完敗と言ってさしつかえない結果でした。

 しかし、岸田文雄首相は、落選した石原伸晃氏を内閣官房参与として登用することを発表。この人事には、与野党の支持者を問わず、反発が出ました。そして、石原氏が代表を務める党の支部が雇用調整助成金を受給していたことが大きく報道されたことで、石原氏は内閣官房参与を辞任することになりました

 首相官邸や政界の取材歴が10年超のフリーランスカメラマン小川裕夫(@ogawahiro)が、石原伸晃氏のみならず落選議員の処遇や政界から離れていった元政治家たちの去就について解説します。

青天の霹靂だった山本候補の立候補表明

 東京8区は石原王国とも呼ばれる選挙区です。そのため、野党は衆院選を前にして候補者を一本化するように調整しました。候補を一本化しなければ、野党候補の票が分散し、石原候補が有利になってしまうからです。

 そうした調整がおこなわれた末、2021年の衆院選では前回の選挙で約23000票差まで追い詰めた吉田晴美候補が統一候補として擁立されることが濃厚になっていました。ところが、れいわ新選組の山本太郎代表がなんの前触れもなく東京8区から出馬を表明したのです

 山本代表は2013年の参院選に東京選挙区から出馬して当選。再選を目指した2019年の参院選では全国比例で立候補しました。代表を務めるれいわ新選組は、2議席を獲得しましたが、山本代表は落選。そのため、きたる衆院選に向けて立候補の準備を進めていました。

以前完敗した雪辱戦となる負けられない戦い

山本太郎

山本太郎議員が国政選挙に初挑戦したのは2012年の衆院選。東京8区から出馬

 他党の陣営のみならず、れいわ新選組の支持者も、山本代表が出馬する選挙区を知らされていませんでした。そうした事情から、周囲はやきもきしていました。

 山本代表の口から「東京8区から出馬する」と発表されたことで、注目していた支持者たちの間には熱狂が生まれました。なぜなら、参議院議員に当選する1年前の衆院選に、山本候補は東京8区から出馬し、石原王国に挑んでいたからです

 山本代表の緒戦は、見事に完敗。それだけに、再び東京8区に立候補すれば雪辱戦となります。山本代表やれいわ新選組の支持者にとって、負けられない戦いです。

 しかし、立憲民主党や共産党といった野党は候補者を一本化するために調整を重ねています。東京8区は吉田晴美候補が立候補予定者として準備が進められ、すでに地元では支援者たちが選挙に向けて動き始めていました。それだけに、山本代表の東京8区から出馬するという宣言は、青天の霹靂だったのです

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