クライアントの美熟女社長から強引な誘惑…27歳営業マンがとった対応は
上司に相談したらまさかの反応
当日。山田さんは食事が終わってから、2軒目にバーに誘われます。ホテルの最上階にあるしゃれたバー、東京の夜景を一望できる2人がけのボックス席で、カクテルを飲んでいるうちに、Aが山田さんにしなだれかかってきます。
「山田さんは『仕事があるから』と断わります。すると、女社長は『デザイナーが必要なんでしょう?』と言ってきたのです。さらに耳元で『部屋を取っているから』とささやくのです。驚いて『そんなつもりはありません』ときっぱり山田さんが断ると、『上司も承知よ』とトドメの一撃」
ヘッドハンティングの話はすべて相手に筒抜けだったのです。翌日、山田さんはこのことを上司に報告します。しかし――。
「上司は平然とした顔で『ところで、契約は取れたのか』と言ってきたのです。しかも『山田はゴルフに行った帰り、A社長とデキたらしいな』とありもしない嘘をついてきたのです。山田さんも思わず絶句してしまいました」
すべては仕組まれていた「白羽の矢」
その場で完全否定した山田さん。そして、Aに電話をして「付き合っているなんて、デタラメを言わないでください」と訴えます。Aは電話で謝罪しましたが、山田さんは納得いきません。上司にも「Aさんの担当から外してください」と嘆願します。しかし、上司は「お前は何年アパレルをやっているんだ」と呆れた顔。
一体なぜ? 矢加部さんはこのケースを次のように分析します。
「山田さんは悪い上司についてしまいましたね。女社長Aさんが年下のイケメンが好きだということを上司は知っていたんですよ。そこで山田さんに白羽の矢が当たった。おそらく上司はゴルフの帰り、山田さんが女社長とデキて、ヘッドハンティングの交渉を有利に進めたかったのでしょう」
山田さんも上司の裏切りに気づき、会社を辞めようか悩みます。とはいえ、どこもあてはない。しかし、そこに一筋の光が見えてきます。
「なんと、Aのゴルフ接待で名刺を交換した中堅会社の経営者が、山田さんの会社のゴルフウエアーを気に入って大量購入してくれます。そこからネットワークが広がって3社もの大型契約を獲得。その月のトップセールスに選ばれます」
社内での発信力を高めた山田さんは人事部に掛け合って別の営業部へと見事異動することに成功しました。モンスタークライアントと知って、部下にそれを押し付ける上司もいますね。山田さんはうまく立ち回ることができましたが、油断大敵といえるでしょう。
― 特集・モンスタークレーマーとの死闘 Vol.10 ―
<TEXT/夏目かをる イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>