“残りカス”から生まれた大ヒット「バスクリン」のブランド戦略
そして、さらなる改良として爽やかな緑色と香りを加え、1930年に発売したのが「バスクリン」でした。
「バスクリン」は戦争で一度は生産中止になったものの、1950年に販売を再開すると、高度経済成長下における内風呂の増加に合わせて、販売先を銭湯向けから個人向けにシフト、「遠くの温泉より我が家で温泉気分」というTVCMも受け、最大の看板商品となりました。
バスクリンから学ぶビジネス豆知識
上記のエピソードの通り、商品もその成り立ちもユニークな「バスクリン」。「入浴剤と言えば?」と聞かれれば「バスクリン」と答える人も多いのではないでしょうか。
そのようにあるカテゴリを与えられたときに、特定のブランドが思い出される状態をマーケティングにおいては“純粋想起”といいます。
なので、購買検討している顧客に対して、純粋想起の対象に入っていることはマーケティング上、大変有利なわけですが、それの究極系とも言えるのが“バンドエイド戦略”と呼ばれるものです。
これは「バンドエイド」という「ジョンソン・エンド・ジョンソン社」の商品名が、本来の“絆創膏”というカテゴリそのものを表現できてしまうほど、ブランド浸透が進んでいる状態のことになります。
ほかの例で言うと「宅急便(ヤマト)=宅配便」「ルンバ(iRobot)=ロボット掃除機」「ごはんですよ(桃屋)=海苔の佃煮」「ゼクシィ(リクルート)=結婚情報」などが挙げられますね。
ちなみに、上記で触れた通り「バスクリン」もまさにそれか、それに近い強力なブランド力を持った商品と言えるわけですが、現在の親会社であるアース製薬グループでは、加えて「バスロマン」や「バスキング」といった競合ブランドも保持しているのは少し面白いところです。
「バスクリン」の過去の業績や企業情報は「NOKIZAL」で確認できます。
※「NOKIZAL」は就活生から社会人まで、無料・登録不要で使える日本最大級の企業情報活用アプリです。4万社以上の業績情報に加え、メールやカレンダー、各企業や関連情報サービスへの外部連携も充実しており、企業情報収集をサポートします。帝国データバンクが保有する100万社以上の企業調査情報も追加利用可能です
<TEXT/平野健児>