フリーランスに一番必要な能力は「痛覚のニブさ」だ――人気コラムニストの「仕事論」
「いや、おれは大丈夫なんだ」
――フラフラしていた20代のころは、不安とかはなかったんですか?
小田嶋:私はなかったですね。でも、それは特例かもしれない。考えてみれば、将来すごく暗かったはずなんだけど、不思議なことに、なぜかそう思っていなかったんですよ。
その頃、一緒にバンドをやっていた仲間は早稲田の6年生だったりで、就職に失敗してた連中だったんですが、おれ、彼らに対してよく説教していたんです。
「ちゃんと将来のことを考えないとダメだぞ」って。「そういうお前はどうなんだよ」って返されると、「いや、おれは大丈夫なんだ」って答えてました。根拠なく。でも、本当にそう思っていたんですよ。おれは大丈夫な人間だって(笑)。
年収200万円でも「イケてる人生」と思えるならOK
――そのころは、30歳までに就職しようとかは考えてなかったんですか?
小田嶋:とにかく自分は何か大丈夫な気がしていました。そうそう、実はフリーランスでやっていけるヤツの資質として一番大きなものって、うまくいっていないときに思い悩まないタイプだっていうことかもしれない。
実際ほら、フリーランスで中年過ぎてものほほんとやっている40歳以上の人たちって、思い悩まないやつじゃないですか。思い悩まないから成功するとは限らないんだけど、少なくとも途中で心折れて就職するとかってことが、起きないわけですから。
――でも、それってハタ目には完全にやばい状況なのに、本人だけのほほんとしている、っていうこともあり得るのでは?
小田嶋:それはその通り。でも、仮に年収200万円だったとしても、本人が「自分はイケてる人生を送っている」と思い込んでのほほんとしていられるなら、そいつの人生は成功してるわけですよ。事実として。思い悩まないというのは、言い換えれば、自己評価の強さですよね。