<第5回>「金」の時代の終焉!そして夢にあらわれたカール・マルクス――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた
もしも「金」の量以上に紙幣が刷られたら?
紙幣が金をつれていったところには、巨大な建てものがたっていました。
そこは以前には何もない草原だったはずでした。
金「なんだここは?」
紙幣「ぼくを刷る工場さ」
金「なんだって!?」
紙幣「ここでぼくを大量生産して商品世界に流通させるんだ」
金「ちょっと待て。そんなことしたら大変なことになる」
紙幣「何が起こるっていうんだい?」
金「わたしがいるからきみは価値があるんだ。わたし以上にきみが増えると、その土台が崩れる!」
紙幣「きみは自分が不便だったから嫉妬しているんだね。きみは持ち運びづらい。きみは傷ついたら価値が減る。それに比べてぼくはどうだ? 簡単に持ち運べて傷ついたって──もともと紙だから──価値は減らない。ぼくこそが完全な『貨幣』なんだ!」
金「わたしと交換できないきみに、いったい何の価値があるっていうんだ!」
紙幣「そんなこと、誰も気にしていない!」
紙幣は高らかに宣言しました。自分こそ完全な貨幣だと。
それは金への貨幣としての退場勧告でした。
金はそう言い切れる紙幣が怖くなりました。そして、たしかにみんな自分たちの価値を紙幣の枚数で考えるようになり、金のグラム数で考えることはなくなってきていたのでした。
金「ただの……紙きれなのに……」