<第4回>紙幣の誕生、そして貨幣の創世記(Genesis)が始まった!――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた
もっと便利に! もっと持ち運びやすく!
金貨の代わりに紙幣が流通しているのを見て、金は驚きました。
金「ちょっと待ってくれ! そんなのただの紙切れじゃないか!」
上着「しかし、価値をあらわすなら、これで十分だ」
金「わたしみたいにピカピカに輝いてもいない」
上着「確かにそうだ。だが、不思議な魅力はたしかにある」
金「魅力なんてちっともないぞ!」
上着「いいや、紙幣を持っているとなんだかドキドキする」
紙幣を見つめながら上着は不敵に笑い、頬ずりをしました。
上着「ただの紙切れなのに破ることができないよ……」
金「そんな馬鹿な……」
呆然とする金に紙幣は言いました。
紙幣「もはや、金そのものを使う必要はない。その代わりとして紙や、摩滅した硬貨を使えばいいのだ!」
金「ぎゃーっ!」
その地位の転換に金は思わず転倒しました。そして紙幣はハシゴを登り、商品世界を見渡して叫んだのです。
紙幣「わたしならいくらでも刷れるぞ! さぁ、わたしを使って商品を交換しまくるのだ!」
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「はじめの贈与」の反復によって貨幣は流通し、商品は交換され、国は富む。だが、物語は常にハッピイ・エンドでは終わらない。
(岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』一三六頁)
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【次回予告】
持ち運びやすさを極めるため、貨幣の地位は金から紙へと移り変わった! これなら刷ったら刷った分だけ、商品を交換することができる。紙幣が跋扈するそのとき、ついに「あいつ」が動き出す。
?「見えない手が調整するんですよ」
建造が進むノアの方舟。そしてマルクスがやってきて……!? 次回、乞うご期待!
<TEXT/菊池良 イラスト/タナカカツキ>