「父親が借金で蒸発」バブル全盛期の狂乱を描く漫画。作者が歩んだ“驚きの半生”<漫画>
1980年代後半から90年代前半にかけ、日本が好景気にわいたバブル全盛期。この時代を舞台に、ドラマや映画としか思えない波乱過ぎる半生を描いた作品が『ココ・ロングバケーション』(講談社)だ。
10年前に家出をした父親と再会することになった主人公のユウ。南国のフィリピンで怪しいビジネスを手掛け、見た目もすっかり変わってしまった父親と過ごす中で、事件、薬物、妖艶なダンサーなど、現実とは思えない出来事に次々と遭遇していく。“90%実話”と銘打たれたこの作品は、一体どのような作者によって描かれたのか。
そこで、作者である漫画家の近藤令さん(@kondourey)に描くことになった経緯から、内容に関する真相、そして、これまでの漫画家人生について大いに語っていただいた。また、この記事では第1話の一部を特別掲載する。
まじめな性格だった料理人の父親
──東京のご出身なのですか?
近藤令(以下、近藤):はい。小さい頃に育ったのは、東京の麻布で。そこで、父方の祖父が開いた小料理屋を親父がやっていました。カウンターとテーブルが4つぐらいあるような小さな店でしたね。
──料理人ということは、お父様は厳しい方だったのですか?
近藤:厳しいというより、基本的には真面目な人でしたね。子どもに対しては、放任主義で。お店と自宅がいっしょになっていたので、学校から帰るとまだ寝ていることも多くて、家で騒いでると、母親から「どっかで遊んで来なさい」って言われるような感じでした。
借金で父が蒸発。麻布から西東京へ
──真面目にお店をされていたのに、本作『ココ・ロングバケーション』を読ませていただくと、どこかの時点で家出をされると。
近藤:途中で、ギャンブルにハマったみたいで、かなりの借金ができたんですよ。それで、お金を返せなくなって、親父が蒸発して。ぼくら家族も、夜逃げ同然で母親の実家があった三鷹の方へ引っ越したと。小学生低学年ぐらいの時ですね。
──勝手な想像なのですが、麻布にあるお店だと、かなり高級なお店のイメージなのですが。
近藤:いえ、高級とは少し違う、ちょっと変わったお店でしたよ。まだ世の中に出始めたカラオケ機をいち早く導入して、夜はスナックみたいになったりね。純粋な飲食店ではなかったです。