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<漫画>「恐怖を追求した」人気ホラー漫画家。読者を置いてけぼりにしない秘訣/2022年上半期BEST10

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社会風刺漫画を描く意図は?

──こういった社会風刺漫画を描かれるということは、気持ちの中に世直しや社会貢献したいという思いがあるのですか?

洋介犬:そこまで、善人ではないですよ(笑)。よく、「教祖になろうとしているんでしょ?」とかも言われますが、そういう気持ちも全くないです。だったら、作品より僕がメディアに出演するように思うんですよ。ただ、これまで漫画業界で生きてきた責任は少し感じるところはあります。

──漫画業界に対する恩返しのような?

洋介犬:そうですね。作品でストレートには表現していませんが、意味のない体育会系的な体質とか、若手漫画家たちに対する待遇を改善させようとか。そういう思いは込めています。例えば、新しくできた編集部は漫画家にとって、なにが必要なのかを知らないケースもあるので、そういうときは変えてもらえるようにお伝えしますね。だけど、「おれが世界を救ってやるぜ」っていう気負いはないですよ(笑)。

死ぬときの自分に胸を張れるかどうか

洋介犬さん

洋介犬さん

──これまでのお話を聞いていると、そうした漫画業界に対する取り組みもそうですが、人生の転換点で必ず勇気を持って一歩踏み出しますよね。そこでじっと耐えようという感じはしません。

洋介犬:以前はよく、描きたいものを見失った同業漫画家に相談されたときには、好きこそものの上手なれって言っていたんですよ。どうせなら好きなことで楽しくやろうよって。もちろん、割り切ってがんばるのも大切なことですけどね。

 でも、人生において、いちばんダメだと思うのは、みじめな後悔をしちゃうことだと思うんですよ。「こうしておけば成功してたのに」とか「あっちを選んでおけばよかった」とか。それを、最期を迎えるときに感じるのは辛いじゃないですか。

──まったくそう思います。たとえ、選択した道で失敗しても、自分で選んだ道なら納得できますよね。

洋介犬:そうなんですよ。別の言葉で言うと、死ぬ時の自分に胸を張れるかどうか。最期の瞬間、「あぁ、俺はなにひとつ後悔ねぇわ」っていうのが、いちばん幸せじゃないかな。そう思えば、何事も真剣に考えるし、一歩を踏み出す勇気もわいてくる気がします。何だか偉そうな語りになってしまいましたが……(笑)。でも、後悔ばかりよりみじめな失敗の方ほうまだいい。そっちのほうがまだ立ち上がれると思うので。

<取材・文/橋本未来 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

【洋介犬(ようすけん)】
風刺&ホラー漫画家。兵庫県丹波市出身。商業誌のみならず、SNSでも舌鋒鋭い漫画を発表中。代表作は『外れたみんなの頭のネジ』『反逆コメンテーターエンドウさん』『ジゴサタ ~地獄の沙汰もお前しだい』『JC、殺人鬼やめました』など。稲川淳二氏公式推薦作家であり、怪談語り部としてメディア出演も。
Twitter:@yohsuken

反逆コメンテーターエンドウさん(1)

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