<第2回>平穏だった商品世界!そこへ「アイツ」がやってきて…!?――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた
<この物語は岩井克人の『貨幣論』が、もし『トイ・ストーリー』だったら? という仮定のもとに書き進められています。>
【第2回】平穏だった商品世界!そこへ「アイツ」がやってきて…!?
<登場人物>
リンネル:服の素材に使われる亜麻布のことで、英語で言うとリネン。
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ひとつの商品世界を考えてみよう。そこには、たとえば、リンネル(アマ布)、上着、お茶、コーヒー、鉄、さらには金といった商品がふくまれている。
(岩井克人『貨幣論』ちくま学芸文庫、四〇頁)
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a Long Time Ago……はるか昔、宇宙のどこかで……というのは違う映画の話(『スター・ウォーズ』だね)。
えー、ここは「商品世界」。商品たちが「商品語」で会話する世界です。
広い草原をイメージしてください。そこでは商品たちが住んでいるんです。
おや、あそこにリンネルがいますね……。
リンネル「おいらの名はリンネル! 吸水作用のある着心地のいい素材だよ!」
なにか言っていますね。おやおや、そこに上着、お茶、コーヒーも出てきました。4人は車座になって話し出しました。
上着「おれの名前は上着。おれを着ると外を出歩けるぞ。もちろん、着ないで外出してもいいんだが……」
コーヒー「コーヒーです。覚醒作用があります、おしっこに行きたくなる作用もあります、ふっふっふ」
さぁ、彼らが「商品語」で会話をしています。彼らは自分たちの「使用価値」──つまりどんな役立つ機能を持っているかを喋っていますね。
そうして、4人は遊びだします。鬼ごっこやかくれんぼをしました。夏はキャンプをし、冬は雪だるまを作りました。商品世界は平穏でした。
商品世界にいるのは彼らだけじゃありません。鉄や小麦など、ありとあらゆる商品がそこで遊んでいました。
あなたが好きな商品を思い浮かべてみてください。チョコレートでも、ポテトチップスでもいい。その商品もこの商品世界で走り回り、日向ぼっこをし、語り合っては笑い、たまに歌って、遊んで暮らしていました。