“2兆円企業”日本電産が抱える後継者問題の危うさ。73歳の新社長まで登場
売上高10億円の中小企業にありがちな問題
永守氏はプロ用の音響機器メーカーとして有名なティアックで仕事をした後、28歳で日本電産を創業。一代で売上高2兆円企業へと育て上げた名経営者です。365日休まず働いていると言われている通り、仕事に邁進してきました。
エリート教育を受けてきたわけでもなく、どちらかというと学歴偏重主義の日本企業を批判しています。知識よりも経験や能力、実力で結果を出してきたタイプです。この成功体験こそが、今の後継者問題を引き起こしていると考えられます。
そしてこの経営者のタイプは、筆者の経験則では売上高10億円くらいまでの中小企業によく見られます。その点、2兆円企業の日本電産はある意味、例外的ではあるでしょう。
中小企業にありがちな属人化
強力なリーダーシップやカリスマ性を持った人が先頭に立ち、脇を固める人に支えられて企業が成長するパターンはよくあります。多くの場合、このような会社はどこかで成長がぴたりと止まります。属人的になっているためです。
属人的な組織は、専門的な仕事を担っていた人や、強力なリーダーシップで周囲を取りまとめていた人がいなくなると、途端に推進力を失います。
近年は経営者が高齢化しているため、事業承継を目的としたM&Aが盛んに行われています。しかし、特定の人への依存度が高い会社は別の会社に買収されて創業者が引退した後、思うように伸びないことがあります。権限移譲による仕組化ができていないため、トップがいなくなると業務品質が不安定になるのです。
日本電産にも同じことが言えます。営業部門が強いことで有名。営業職は永守氏の指示、承認を何よりも優先し、目標の必達が求められます。未達の場合はその原因を上長が徹底追及すると言われています(東洋経済オンライン2017.1.22「日本電産が赤字会社を速攻で再生できたワケ」ほか)。