1カ月にわずか3回だけ走る黄色い新幹線の正体とは?実は“正式名称”も存在した
700系新幹線の「顔」はどうしてカモノハシに?
2008年11月いっぱいで姿を消した0系新幹線は、新幹線の初代である。先頭車両の団子っ鼻のような姿は、現在から見れば愛嬌のあるものではあるが、青と白ツートンのボディカラーとともに昭和を代表する憧れの列車だった。この0系から、300系、500系とモデルチェンジするにつれ先頭車両の形状は先端部分(ノーズ)を伸ばして、より先鋭な印象を与えるように変化していった。
この先鋭化は、ひとつには走行中の空気抵抗をできるだけ小さくして速度を速くするための工夫であり、結果、300系は時速270キロメートル、500系は300キロメートルと最高速度記録を更新していった。具体的な数字で見ると、ノーズ部分の長さが、0系で約4.5メートル、300系で6メートル、500系になると一気に15メートルにまで伸びている。
ところが、さらにモデルチェンジした1999年搭乗の700系では、9.2メートルと短くなっている。ノーズから運転台、客室へと続く面が複雑な曲面で構成され、先頭車両はまるでカモノハシの顔のような姿になった。先頭部分の徐々に長くなっていたノーズが短くなり、しかも張り出したかと思うとくびれがあるカモノハシの顔のようになったのは、いったいどういうわけだろう。
新幹線にとって、スピードアップはもちろん重要課題ではあるが、それ以外にも重視しなければならない課題があった。たとえば「新幹線の列車同士がすれ違うときの車体の揺れを減らす」「走行中の車体が生み出す空気の流れが最後尾の車両の揺れを大きくするのを抑える」などの改良だ。
一番の問題は、トンネル進入時に発生する大音響
なかでも、トンネル進入時に発生する大音響は一番の問題だった。列車が高速でトンネルに入ると、入り口付近の空気は圧縮され急激に奥に押しやられる。この空気が生み出す圧力波がトンネルの奥へ奥へと伝わると、出口で「ドン」という爆発音のような大きな音が発生してしまうのだ。
この音は長いトンネルほど大音響になる。騒音発生の原理がわかり、500系ではトンネル突入時に生じる気圧変化を緩和するため、長いノーズとなった。だがこれでは先頭車両の客室の天井が低くなり、座席数が減るなどの課題が残った。こうした課題を踏まえて開発された車両が700系だ。
700系はノーズを短くし、単純な流線型ではなく正面から見ると運転席の前にはくびれがあり、さらに下へ行くと今度は張り出した部分がある。くびれ部分は、トンネル突入時の気圧変化を抑える効果があり、張り出し部分は、運転台からの視野を確保している。
700系は500系に比べて、最高速度285キロメートルとややスピードは落ちるものの、ノーズが短くなったぶん先頭車両の客席数を確保でき、乗り心地も騒音も大きく改善されたのである。