安倍氏暗殺、なぜ駅に背を向けて演説したのか?「首相経験者」が過去にも危険な場面に
大阪は「東京では考えられないような距離感」
こうした要人警護は警察庁や各都道府県警察が計画を練っています。実は、各県警のほうが地形などを把握しているので、各都道府県警によって警備のやり方が微妙に異なることもあります。
筆者は地方でも政治家を取材することがありますが、たまたま大阪に滞在しているときに河内長野駅前で二階俊博議員が街頭演説するとの情報をキャッチし、取材するため足を運びました。現地に着くと、周囲は厳重な警戒体制が敷かれ、二階議員が演説する街宣車から約20メートル以内には立ち入れないように規制されていました。
二階議員の姿は望遠レンズを使っても豆つぶほどにしか写らず、警戒にあたっている大阪府警や自民党のスタッフに対して「もう少し近寄ることはできないのか?」とお願いしましたが、聞き入れてもらえませんでした。東京では考えられないような距離感です。
まったくSPがつかないケースも
それほど厳重な警戒をする場合もあれば、まったくSPがつかないケースもあります。立憲民主党の菅直人元首相は今回の参院選でも応援演説に立っていますが、吉祥寺駅で実施された松尾明弘候補の応援演説では地べたに立ち、周囲にはSPは見当たりませんでした。
菅元首相が気さくに姿を現すのは、今回の参院選だけに限った話ではありません。アイドルグループAKB48は「会いに行けるアイドル」を標榜していましたが、菅元総理も「会いに行ける総理」と言われるほど積極的に有権者と接しています。また、野田佳彦元首相も地元の駅に立ち、自らビラ配りをすることで知られています。
また、民主党政権の末期に羽田孜元首相をお見掛けする機会がありました。羽田元首相は2012年に議員を引退するわけですが、それまではSPがつき、身辺を警護していました。
ほかにも個人的な体験になりますが、筆者は在京ラジオ局の番組に出演するため、出演者の待機スペースとなっていたラウンジで座っていると、遠くから細川護煕元首相がやってきて私の隣に腰掛けたことがありました。
細川元首相は私が出演した番組の後に放送される別番組に出演する予定だったのです。細川元首相は早く到着してしまい、ラウンジで待機していたのです。到着したという知らせを受け、ラジオ局の上層部の偉い人たちが慌てて待機スペースにやってきました。その場にSPは見当たりませんでした。