日本の4000万人は「お酒を飲まない人」。アサヒビールの新会社社長に聞いた
会社設立に生きたインドネシア駐在の経験
また、スマドリ設立の背景には、梶浦氏のインドネシア駐在の経験もあった。2年間のインドネシア駐在で、お酒を飲むマイノリティーの立場を経験したことが少なからず影響している。
「インドネシアはイスラム教国。国民の9割近くがムスリムで、ソーシャルな場で飲酒はできません。そのような国で、お酒を飲む私はマイノリティーでした。現地の人はお酒なしで3時間、楽しそうに会話しながら夕食を食べますが、飲みたくても飲めない私にとっては耐える時間でした。
日本と逆であることは左脳では理解していたものの、最初は慣れず苦痛でした。現地の人たちは『飲んでもいいよ』と気を遣ってくれましたが、飲める雰囲気ではありません。3時間の間、お酒を飲まず何を話しているかわからない会話を聞いていました。
この時の経験から、日本ではお酒が飲めない人が飲める人に気を遣っていることに気づきました。インドネシア駐在は苦労しましたが、お酒を飲むマイノリティーの立場を経験したことと、お酒を飲まなくても楽しくすることができる世界があるという気づきは、スマドリ設立に生きています」
お酒が飲めない人をメンバーにアサイン
スマドリはアサヒビールと電通デジタルの社員によって構成。お酒を飲めない人の立場からさまざまなアプローチを試みると同時にZ世代向けのマーケティングを行う。会社設立にあたり意識したのは、スマドリ内でお酒の多様性を確保すること。これがないと酒飲みの発想になりがちで、間違いを起こしてしまいやすいからだ。
「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)があると意識したので、お酒が飲めない人が必要だと考えました」
そのため、電通デジタルからの出向者にはお酒が飲めない人をアサインしてもらえるようお願いした。お酒を飲む人やまったく飲めない人だけではなく、あえて飲まないソバーキュリアス、妊娠・出産でお酒が飲めない時期があった人などがスマドリには集まった。