「私が韓国の語られざる歴史を描いた理由」チャン・ジュナン監督を直撃
近くて遠い国と言われる韓国。その1987年に起きた民主化運動の真実に迫る、社会派の映画『1987年、ある闘いの真実』が公開中です。
ソウル大学の学生が警察の取り調べ中に死亡したことをきっかけに、国民たちが立ち上がり、歴史を変えた実話です。『チェイサー』のキム・ユンソク、ハ・ジョンウら実力派のオールスターキャストにより、力強い群像劇を描き切ったチャン・ジュナン監督に話を聞きました。
韓国でも語られてこなかった真実
――韓国の民主化闘争、6月民主抗争へ至る出来事が描かれています。ほぼ知識のない状態で鑑賞したのですが、冒頭から引き付けられ、人々の想いがどんどん波及し大きな力となっていく様にふるえ、最後は泣きました。監督は当時、大学生になる少し下の年頃だったかと。
チャン・ジュナン監督(以下、チャン):あるとき、本作の第一稿とともに企画を受け取りました。私は1987年に起きた出来事について、大まかな内容しか知りませんでした。本当に多くの人々が集まることによって、こんなにもドラマチックで複雑な出来事が起きたのだと、シナリオによって知ったのです。
――監督も事前の知識はそれほどない状態だったんですね。そこから、韓国の転換期を撮ろうと決断された理由はなんだったのでしょう。
チャン:この映画で描かれた出来事は、韓国の歴史において非常に重要な足跡であるにも関わらず、語られてこなかったのです。フラストレーションを感じ、一方で、では自分が語ろうという欲も湧いてきました。
また、私も歳を取り、子どもを育てる親になってみて、愛する次の世代のためにどんな世界を残すことができるのかと、いろいろ悩むようにもなっていました。
この作品の企画が動き出した当時、朴槿恵(パク・クネ)政権下において、以前の独裁政権の時代に戻っていくかのような危機感があったのです。だから、映画を通して次の世代のために、また今の時代を生きている韓国の多くの人々のために、語りたい物語だと思ったのです。
民主化運動から30年、韓国の変化は?
――1987年の民主化運動から30周年となった昨年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が記念式典でスピーチをするなど、改めて注目が集まりました。この30年で韓国はこう変わった、もしくは変わっていないと感じていることを教えてください。
チャン:本作の脚本を推敲しているとき、もうひとつの市民革命が起きていました。人々は石の代わりに、ろうそくを持ち、政権にNOを突き付けました。ろうそく革命(キャンドル革命)です。そのとき、なぜ同じような歴史が繰り返されるのだろというもどかしさも感じました。
30年前と比べ、韓国は外見上、非常にダイナミックな変革を遂げました。撮影をしているとき、30年前と同じ姿をしている場所を探すのにとても苦労しました。しかし、政治的な部分においては、また過去に戻るような状況にある。そうした現実も、私の背中を押しました。