『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督に聞く「逆境の楽しみ方」
――ワンカットのシーンは6回撮影してようやくOKとなったそうですが、本編で実際のハプニングが映ってしまったところはありますか?
上田:カメラのレンズに血がかかってしまったり、片腕ゾンビの登場が想定より遅れて俳優たちがガチのアドリブで繋いでいたりとかですね。あとは、僕でも分からないくらい本当に転んでいるところも何か所かあると思います(笑)。
自分がやりたいことだけをやるより逆境が好き
――劇中では、無理難題に応えようとする映画監督の現状も描かれていますが、ご自身もこういった不自由さを感じたことがありますか?
上田:それはもちろんありますけど、誇張して描いているところはありますよ。ただ、僕は自分のやりたいことだけに固執してやっているよりも、周りからむちゃくちゃ言われて、かき回してもらいながら作ったほうがプラスに転じることがあるんです。それによって、100点が120点になったこともありましたね。
――ちなみに、実際にどんなことがありましたか?
上田:たとえば、過去に手掛けた作品では、関係者から自分の愛人にセリフを作って出せないか、と撮影直前に言われたこともあります(笑)。逆境が好きということもありますが、「ヤバいなぁ」と言いながら笑っている感じですね。あとは、解決策が浮かんでいなくてもとりあえず「わかりました!」って言ってしまうんですよ(笑)。「できません」が言えないんです。
――現在は34歳になられましたが、20代のときには騙されて多額の借金を背負ったり、ホームレスになったりといろんな失敗も経験されているようですが、そこから学んだことは何ですか?
上田:どんな悪いことでも、結果オーライになることが結構あったので、20代前半のときに食らったことがいまに生きていることは多いですね。それもあって、“正解を選ぶ”んじゃなくて、自分が選んだ道を死ぬ気で“正解にする”という感覚です。