ミールキットが急成長の「オイシックス」に聞く、累計1億食突破の背景
ひと手間加えた調理で安心感を醸成
また、単にレンジで温めて食べるような商品ではなく、食材をカットしたり炒めたり工程を入れることで「料理を作っている感」を出すことを意識したという。
「惣菜やお弁当のような調理済みの商品に頼ってばかりいると、手抜きをしているかもしれないという不安から『罪悪感を抱いてしまう』といったお客様のお声もありました。そのため、あえて調理にひと手間かかる工程を加えることで、料理を作る楽しさの創出や家族と一緒に囲める食卓づくりへとつながるように心がけたんです」
ミールキットを浸透させるために創意工夫を重ね、Kit Oisixは次第にブランド認知を向上させていった。ユーザーへのヒアリングにも力を入れ、商品の改善に活かしたそうだ。
「『普段は家で食べないような料理を作りたい』『賞味期限がもたないのが不安』といったお声も新商品の開発に役立てています。笠原将弘さんやコウケンテツさんなどの有名シェフ監修の商品や、10分で主菜と副菜が完成する『クイック10』など、お客様の声から商品のラインナップを拡充させてきたのが強みになっていると考えています」
1億食突破の原動力になったメニューの豊富さ
特に2020年からのコロナ禍では、時短や省力化のニーズが高まったのを受け、無印良品やワタミといった異業種からもミールキット事業へ参入する動きが活発化している。そんななか、Oisixが他社と差別化を図れている点については「野菜の品質へのこだわりや食材の安心・安全を確保できること」だと神田氏は話す。
「お客様の声に耳を傾け、潜在化しているニーズを掴むためのヒアリングを重視しています。そこから商品の改善やアイデアの発案を行い、Kit Oisixのさらなる価値創造へとつながるような循環を作れている。これが結果的に、他社と差別化になっていると思っています。そして、メニューの飽きがこないよう、毎週20種類ほどのメニューを用意し、バリエーションが豊富になるよう努めているんです。また、季節の行事やイベントに合わせたミールキットを発売し、Kit Oisixの利用シーンを拡大する試みも行っています」
そのほか「大戸屋」や「一風堂」といった外食チェーンとのコラボなど、コロナ禍では新商品開発の点数を増やすことに注力。商品ラインナップの充実や話題化を狙ったコラボ施策が相まって、有料会員コース「Kit Oisix献立コース」の会員数はコロナ前と比べて約2倍純増し、1億食突破の原動力になった。