ロシア人である恩恵を受けていたのも事実

プーチン大統領© Frédéric Legrand／dreamstim

　これまで僕は、ロシアに行くつもりでいたので、出来るだけ中立的な立場で発信していたが、今回の件でロシアへ行こうという気持ちは完全になくなった。

　正直、もう日本で育ってるし、こんな国のやってること僕には関係ないもん！ と、逃げたい気持ちすら湧き起こったが、これまでロシア人を名乗り、ある意味ではその恩恵を受けていた（見た目が違うという意味で）一面もあるのは事実。ここで、黙り込むような自分の気持ちに無責任なことはしたくなかった。

　ロシアを批判した動画を出し、YouTube動画の収益もウクライナ赤十字に寄付をすることにした。そして、たくさん入った取材を受け、この戦争にNOを言い続けた。それでも、侵攻は止まらない。ロシア国内で声が上がらなければ意味がないからだ。残念なことに、私たちはロシアへの影響力がない。

　知り合いに電話をかけ、「今のロシアのメディアで放送されていることはプロパガンダである」と伝えてみることはしたけど、あまり効果的とは思えなかった。なかには現地で反対の声を上げてくれた人もいたが、「お前のほうが西側メディアに洗脳されてるんだ」とキッパリ連絡を絶たれた人もいた。

僕はどう行動するのが正解なのか

　日本国内で「戦争反対」と言っても、自分の保身をしているように見えるだけなのではないか。結局、ロシアに行って声を上げなければ意味がないのではないか。そんなことを思ったが、これだメディアでプーチンを批判してきた僕が、今、ロシアに行けば、声をあげる間もなく逮捕されて終わるだろう。仮に逮捕されなかったとしても、ロシア語の読み書きすらできない僕がどこに住み、どうやって生活をすれば良いのだろうか。

　もしも殺されてしまったら、僕の経営する会社の日本人社員たちの生活はどうなるのだろうか。そんなことをすることに本当に価値があるのだろうか。という考えが毎日毎日頭の中を巡る。結局、戦争に対してNOの声を上げていたとしても、僕はしょせん安全圏にいて、他人のために命を投げ出す覚悟なんてできないビビりなのだ。

　自分はそんなビビりなのに、現地の人に「反戦運動をしろ」などと、たやすく言って良いのだろうか。ロシアに住む彼らも、子供がいて家族もいる、声をあげたくても、あげれない彼らを責めることができる立場にいないのだ。結局、僕は、今どう行動するのが正解なのか分からないでいる。そうしている間にもウクライナでは子供たちが悲惨な目に遭っている。こんな戦争を起こしたものが憎くて仕方がない。今後どんなふうに生きていけば良いのだろうか。

＜TEXT／ピロシキーズ　小原ブラス＞