部下を「エアガンで狙撃」…悪質パワハラの実態と防止法施行で変わること
パワハラ事例③ 退職を強要される
ある方は、「仕事に向いていない、やめた方がいい」などと言われたり、在庫が切れた際には「盗んだのでは?」と言われたり、いわれもないことで反省文を書かされたりしたようです。ついには上司から「退職するまで帰さない」と言われ、4時間近く拘束されて退職することを強要され、耐えられずに退職しました。
ここまでされては精神的健康を維持して勤務し続けることは難しそうですが、過度な退職勧奨ということで慰謝料を請求できる可能性があります。弁護士に相談することも視野に入れましょう。これらの例は、筆者が聞いたパワハラ事例の中でも、特に印象の強かったものになります。しかし、実際の事例のほとんどは「グレー」ともいうべき判断の難しいものです。
そのような場合でも、「疑わしい場合は相談する」という姿勢で対応するのが重要になります。また、会社の設置した窓口が信頼できない場合は、行政や弁護士に相談するという手段も考えに入れておきましょう。
「ハラスメントに耐えられる」は無価値に
行政や企業のパワハラ対策が進展しつつありますが、世の中からパワハラ問題が無くなるのはまだまだ先になりそうです。その理由としては、労働者視点で考えると、パワハラに遭っても自分の生活やキャリアを優先して我慢せざるを得ないというところが大きいのではないでしょうか。
今回の施行によって、より多くの労働者が活き活きと働ける社会になることを願っていますが、どうしても現在の職場がつらい場合は転職するのもひとつの手です。
終身雇用制度や年功序列が崩れつつある現代では、転職は自分のキャリアにとって昔ほどマイナスではありません。むしろ、自らのキャリアアップや成長のチャンスになるでしょう。大切なのは自分がいま精神的苦痛を感じずに充実して働けているかどうかです。
「パワーハラスメントに耐えられる」なんて人材的な価値はこれからの労働市場において意味をなしません。もし現在パワハラに遭っていて、相談したとしても解決が難しいと思われる場合は、労働環境そのものを変えることを検討してみてはいかがでしょうか。
<TEXT/株式会社UZUZ 常務取締役 川原敬史>