岸田首相、注目が集まる「2022年年頭会見」。安倍・菅路線からの脱却なるか
2021年の総裁選・衆院選を通じて、岸田文雄首相が繰り返し主張してきたのが「聞く力」です。なぜ、「聞く力」を強調しているのでしょうか? そこには、長らくつづいてきた安倍・菅首相からの方針転換が意識されています。
前回の記事では野党時代に自民党が強化していた情報発信、そして安倍・菅政権でも引き継がれたことを解説しました。今回は、首相官邸や政界の取材歴が10年超のフリーランスカメラマン小川裕夫(@ogawahiro)が、前政権から方向転換を図ろうとする岸田首相の「聞く力」と発足から3か月間の道のりを解説します。
当初は「分配なくして成長なし」を標榜
2021年10月に発足した第1次岸田文雄内閣は、直後の衆院選を圧勝。その結果を受け、11月10日には第2次岸田内閣が発足。衆院選では甘利明議員が小選挙区で敗北。比例で復活を果たしましたが、その責任を取って幹事長を辞任しています。
新たな幹事長には、外務大臣だった茂木敏充議員がスライドする形で就任。新しい外務大臣には、参議院から衆議院へと鞍替えして当選した林芳正議員が抜擢されました。そうした細かな大臣の交代はありましたが、第2次岸田内閣の陣容は第1次とほぼ同じです。
岸田首相は第1次内閣が発足した当初に、新しい資本主義を掲げました。岸田首相は「分配なくして成長なし」を標榜し、これは安倍政権で推進されたアベノミクスからの方向転換を意味していました。
しかし、これに株式市場が敏感に反発。株価の下落を引き起こしたことから、「成長なくして分配なし」と言葉の順番を入れ替えるなどの軌道修正に追われました。
大胆な取り組みが打ち出されたが…
言葉の順番が違うだけだから意味は同じでは? と思う人もいるかもしれません。しかし、順番が異なれば、意味は大きく違ってきます。また、12月に入っても岸田首相は国会答弁で企業の自社株買いについて言及。岸田首相の発言が、自社株買いを規制すると受け止められて、これが株式市場から大きな反発を招いています。
安倍内閣で取り組まれた経済政策、いわゆるアベノミクスは結果的に富裕層が豊かになることを優先した経済政策でした。取り組まれた当初は、富裕層が豊かになれば、経済活動は活発になり、その恩恵は低所得者層にも滴り落ちるといわれてきました。
いわゆるトリクルダウンと呼ばれる理論ですが、実際にアベノミクスでトリクルダウンは起きず、富裕層と低所得者層の所得格差は拡大しています。安倍内閣の次に発足した菅内閣は、ほぼ政策を踏襲しましたが、アベノミクスの弊害でもあった所得格差の是正に向けた政策に取り組んでいます。しかし、効果はあがっていません。
岸田内閣では所得格差の是正に向けた大胆な取り組みが打ち出され、主に株式市場に関連したものが目立ちます。しかし、前述したように岸田首相の方針に株式市場は反発しています。株式市場が大きく反発したことで、岸田内閣の「分配なくして成長なし」は腰砕けの様相を呈しています。