コロナ禍なのに“内定辞退”が多発する就職戦線。学生の環境は改善できたか<常見陽平>
学生の就活環境はむしろ改善?
この時期も格好も横並びであることは批判されてきたが、いざ横並びでなくなると、ペースがわからず困る学生もいる。「いつから、何から始めていいのかわからない」コロナ後の就活生の悩みである。コロナで気持ちが落ち、民間企業就職を希望していても、一歩、前に進めない学生もいる。
結果として、企業からみると、新型コロナウイルスショックの影響で求人倍率は悪化したものの、売り手市場かのように見えてしまう。
学生と企業が対等な関係で、双方向で理解を深め、意思決定をする。これが、1990年代なかばに「リクナビ」ができた際に、理想として掲げられた就活像だった。なかなかそうはならなかったが、コロナ時代になり、オンライン就活になった上、“隠れ売り手市場”になったがゆえに、学生の就活環境はむしろ改善している点もあるとみることもできる。
以前は経団連が、今は政府が事実上取り決めているこのスケジュールは学生が利用する「就職ナビ」などのオープンスケジュールなどに影響を与えるという意味で無力ではない。ただ、企業が必ずしも順守しているわけではない。とはいえ「形骸化」と言い切れるかというと、これも必ずしもそうとは言えない。このような目安があるからこそ、「青田買い」「フライング」の基準が明確になるとも言える。
就活スケジュールは以前に戻ったのか
そもそも、我が国の就活の歴史は時期論争の歴史だった。10年前からその論争は続いていた。2022年卒の学生たちは、一部で就活が「超早期化」していると言われていた。ただこの問題は、今に始まったことではない。とりわけ2010年代は、就活時期の模索が何度も行われた。
2012年12月。安倍晋三元首相が2度目の内閣総理大臣に就任して以降、円安誘導などを図った「アベノミクス」の中で学生たちの就活が見直された。2013年4月、安部元首相は経済団体に対して2016年卒からの就活解禁時期を大学3年生の3月からと要請。経済界はこれを受け入れた。以前は大学3年生の10月や12月だった。
背景にあったのは、就活の早期化、長期化に対する問題意識だ。2000年代にさかのぼると、各社の就職サイトがオープンするのは3年生の10月。会社説明会も同時に解禁され、4年生になったばかりの4月に選考が行われていた。