サイバーエージェント、ライブドアを経てクラフトビール会社を興した男が語る「魅力と収入の覚悟」
「造ること」こそが、クラフトビールの魅力
――独立や新しい事業の立ち上げにあたって、苦労したことはありますか?
山田:うちの場合は、もともと自社工場を作ることが目標でした。でも工場は設備投資をして、固定費を抱えながらやらないといけないんです。なので、最初の頃は「契約醸造」という形で、自社工場は持たずに他の工場でオリジナル商品を作って販売していました。
それである程度販路ができたら、自社工場を設立するという計画だったんですけど、予定では3~4年で作りたかったところが、7年かかってしまったのは苦労しましたね。
――予定より時間はかかってしまったものの、自社工場の目標は達成できたんですね。
山田:はい。当然、契約醸造でやっていた頃と、自社工場で固定費を抱えながら生産している今とでは、リスクの大きさがだいぶ違って、難しさが増してきてはいます。単純に安定した利益だけを追い求めるなら、むしろ自社工場は持たない方が経営としてはやりやすいんです。
クラフトビール業界は大きな1つの共同体
――そのリスクを背負ってまでも、自社工場を持つことへの思いは?
山田:もともと僕は「ビールを製造する」ということをやりたかったので、最初からそうする予定だったというのが一番大きいですね。クラフトビールというのは造ってなんぼなんです。ブランディングとかそういうものだけではなくて、「造る」というのがクラフトビールの魅力だと思っているので。それが、クラフトビールがクラフトビールである所以(ゆえん)です。
もしマーケティングやブランディングだけの話なら、それはたぶんクラフトではなくて、ラグジュアリーブランドになってしまうと思うんですよね。
――「クラフト」に対するそこまでのこだわりはどこからくるんですか?
山田:私も最初はクラフトビールの知識は浅かったんですけど、実際に業界に入って他社との交流をしていくうちに、業界全体のことが見えてきました。クラフトビールの業界って、大きなひとつのコミュニティみたいな感じなんです。
「ビールを多様化して面白くしていこう」という志を持った人が集まっている共同体のようなイメージです。尊敬しますし、刺激を受けます。