一目でわかる現在の陰謀論の危険さ

Two Trump Supporters Demonstrate at the Ohio Statehouse Ahead of Biden`s Inauguration　© Adrienne Wallace | Dreamstime.com

――普通に生活していたはずの人が、誰が流したか分からないような真偽不明なネットでの発信を見て変わってしまうケースが相次いでいますよね。

雨宮：陰謀論に“感染”したから、おかしな部分が出てしまうと思うんです。総じて敵対勢力を小ばかにしたり、大して知識もないのに賢さを匂わせてきたり、それが気持ちいいんだろうけど、自分たちだけが真実を知っているとか世の中がよく見えていると勘違いする。「目覚めた」ってよく言っていますよね。

　たとえばアメリカのことを何も知らなくて選挙制度や歴史を学ばなくても、誰かが作った動画を見てなんとなく勉強した気になって大統領選の不正疑惑に言及ができます。今年の頭ぐらいにそういう人がたくさんいましたね。

――そうは言っても「あなたを陰謀論者に―」の内容では、そういう人たちを厳しく批判するような論調はありませんでした。

雨宮：そうかもしれません。あからさまな批判まではしなかった。現在の陰謀論の問題は、わざわざ否定しなくても、たとえばQアノン信者によるアメリカの議会突入など取り上げるだけで一目見て危険だと感じられる事件はたくさんありますから。

陰謀論とマルチ・悪徳商法の類似性

雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』 (フォレスト2545新書)

――陰謀論を語っての配信やセミナーなどで荒稼ぎをしているような人も目立ちます。妄信的な人を煽ってまるで洗脳するようなことが収益に繋がるのは問題だと感じます。

雨宮：YouTubeに流せば再生数が上がって稼げるようになって、セミナーを開いて変なグッズやサプリを売ったりしていますよね。陰謀論や変なスピリチュアルの集団などは、なんとなく雰囲気を作って入り込ませてしまうんです。「えらいね」「よく目覚めたね」と拍手したりだとか。そういう空気を作ることによって、何も買う気がなかった人が買ってしまうかもしれません。

――マルチ商法などの手口と似ていますね。

雨宮：悪徳商法やマルチの人たちを見ていると、（上納金の）15万円を払った人が偉い、よくやった！ みたいな、まるで「ヤンキーの世界」で「カチコミをした者が称えられる」という空気感があります。たくさん褒めてもらえる、評価されるとなれば、変な行動をとる人も出てきてしまうわけです。

　陰謀論を信じることにしても、他人への危害がなければいいのかもしれないけど、そういう空気感を作るような不健全な集団が形成されてしまうことが悪いのだと思います。