ラオックス「日本人向けに転換」でも苦境。驚きの一手で親会社を救済へ
リニューアルわずか約1年後に…
このラオックス道頓堀店は、ここだけで食べられる・買える商品やイベントがあるとして話題を呼び、評判も上々であった。
しかし、大阪一等地の家賃の高さに耐えかねたのか、リニューアルからわずか約1年後の今年9月末に結局閉店に。とくに、店舗の顔として人気店を集めていた「奈雪の茶」の日本撤退を惜しむ声は少なくなく、SNSでも惜しむ声が聞かれる。店舗にうかがったところ、ラオックスの閉店は急なことであり、移転するかどうかなど今後の日本での展開については「全く決まっていない」という。
ラオックスは今夏以降、道頓堀以外に東京・銀座や大阪・心斎橋などからも撤退。「アジアンコスメ」「アジアンフード」などを強化した「新業態」を引っ提げて店舗のリニューアルに取り組みつつある同社であるが、やはりこれまでのような「一等地」での大型店運営をおこなうには「外国人観光客をターゲットとした免税店業態」に匹敵するほどの売上がなければ難しいであろう。
親会社「蘇寧グループ」も危機的状況…
免税売上が消失、新業態も経営再建の切り札になるかどうか不透明な状況となっているラオックスであるが、実はその親会社・蘇寧グループも深刻な経営難に陥っている。
ラオックスの親会社である蘇寧グループ(本社:江蘇省南京市)は1990年に創業。現在は年間売上約4兆円(2019年期・2020年期:約2500億元前後)を誇る中国大手のEC(ネット通販)サイト「蘇寧易購」を中核に、大手家電量販店「蘇寧電器」、2019年に買収した「カルフール中国」(フランス系スーパー)などを傘下に持っており、中国でも有数の小売企業として知られる。
しかし、競争激化に加えてコロナ禍によって小売業は不振を極めており、蘇寧易購は2020年の通期決算で上場以来初の通年赤字に。今年に入って以降は蘇寧グループが所有する人気プロサッカーチーム「江蘇足球倶楽部(江蘇FC)」を解散させるなど、経営方針を規模拡大から大規模リストラへと転換した。
事態を重く見た地元政府も蘇寧グループの支援に乗り出したものの、同社は経営問題で世界を賑わせる中国不動産大手「恒大集団」にも巨額の投資をしているといい、当然ながらラオックスについてもさらなるリストラは避けられそうにない。
そうしたなか、このラオックスこそが親会社を助けることになりうる可能性もある。そのカギとなるのが、同社が中国で立ち上げた新会社による「新事業」だ。