アニメ好きを隠して撃沈…彼女ができるチャンスを逃した24歳男性の後悔
奇跡のチャンスを逃してしまったウソ
「奇跡のような出来事でした。もちろん、すぐに『行こう! 僕も本当は、そのアニメが好きなんだ』と、そう言うつもりでした。でも、給湯室の横にある廊下から、男性が数人で話す声が聞こえてきたんです。しかも、その声は、どんどん近づいてくる感じでした」
廊下の声も給湯室に響くし、給湯室の声が廊下に漏れていることもよくあったため、椎野さんは急に怖くなったのです。ハナさんの声が大きかったことを思い出し、いま近づいている声のように、さっきのお誘いの内容が聞かれていないかと不安になります。
「そして僕は、『僕は、まったく興味がない。この前は、話のノリで僕も面白いと思うなんて言っちゃったけど、そのアニメを好きなのは、メモ帳をくれた小学生だから』と、結構大きな声で言ってしまったんです。自分自身の不安をかき消す感じでした」
ハッと我に返って目の前のハナさんに視線を移すと、心なしかシュンとした様子で椎野さんを見つめています。廊下の声がピタリと止んだこともあり、すぐに謝ってライブへ行こうと言おうとしたその時、椎野さんの同期男性Mさん(当時・24歳)が給湯室に入ってきたのです。
数々のウソで失ったチャンス
「僕たちの気まずそうな空気を察してか、『あ……ごめん。邪魔しちゃったかな?』なんて声をかけてきたもんだから、僕はもう、すっかりパニックになってしまいました。そして、『ハナさんが声優さんのライブに誘ってくれたけど、僕はまったく興味がなくて』なんて言ってしまったんです。僕、ホント最低です」
椎野さんが自己嫌悪に陥っていると、「え? 俺、そのアニメ、めっちゃ好き! 声優さんのライブとかも行ってみたいと思ってたんだ」とMさんがはしゃぎはじめました。いつもクールな印象とは大違いで驚いたという椎野さん。
「でも、全然カッコ悪いとかは思いませんでした。むしろ、自分の好きなことを堂々と言えるってカッコイイなって。それにハナさんも、すごく嬉しそうな顔をしていました。2人はその後、付き合っています。そんな2人の幸せそうな姿を毎日のように目にしていますし、本当に後悔しかないです」
そのことがあってから椎野さんは、「趣味は自分の好きなことなんだから、恥ずかしがらずにハッキリ言おう」と決意したそうです。自分の好きなことは堂々と伝えて、趣味仲間やチャンスを逃さないようにしたいものですね。
<TEXT/山内良子 イラスト/カツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>