連日話題の自民党総裁選。今さら聞けない総裁選の疑問をイチから解説
2021年9月3日、それまで続投に意欲を示していた菅義偉首相が、きたる自民党総裁選に出馬しないことを表明しました。これにより、任期満了とともに菅氏は退任。同時に、首相の座も退くことになります。
9月17日に次期総裁を決める選挙が告示され、自民党は新総裁の選出に向けて動き出しました。今回の記事では、首相官邸会見の取材歴が10年超の、フリーランスカメラマン小川裕夫が混戦模様の自民党総裁選を解説します。
当初は高支持率だった菅内閣だが…
2020年に高支持率で発足した菅内閣は、当初から新型コロナウイルスの対応に追われました。高支持率は国民からの期待が高かったことを物語っていますが、国民の菅政権への評価は日に日に下降していきました。
菅首相にとって、ダメ押しになったのが8月22日に投開票された横浜市長選です。菅首相が全面支援した候補は惨敗。野党陣営の支援で当選した山中竹春新市長は、横浜市立大学教授という素晴らしい経歴の持ち主ですが、行政経験はゼロ。また、テレビに頻繁に出演するタレントでもありません。
そんな山中氏が横浜市長選で並み居る候補者相手に圧勝したのです。圧勝といっても勝ち方はさまざまですが、今回の市長選は投票が締め切られた20時ジャストでNHKが当確を打つ、いわゆる“ゼロ打ち”の圧勝でした。
横浜は菅首相の地元です。コロナ対応で支持率が下がっていたので、勝つことは難しくても接戦まで持ち込んで欲しいーーそんな思いを抱いていた自民党の議員はたくさんいたでしょう。なぜなら、2021年秋には衆議院議員4年の任期が切れ、選挙が実施されるからです。
横浜市長選は衆院選を占う意味でも重要な選挙になりました。自民党が支援した候補者が惨敗したこともあり、菅氏のままでは衆院選を戦えないという声は党内で高まりました。これで菅氏が続投する目がなくなったのです。
自民党総裁選は「次の首相を選ぶ選挙」
現在、自民党は公明党と連立与党となっていますが、自民党総裁が首相に就くことは疑いようがありません。つまり、9月29日に投開票される自民党総裁選が実質的に次の首相を選ぶ選挙なのです。
今回の総裁選は、フルスペックで実施することが決まっています。フルスペックとは、衆参議長を除いた自民党所属国会議員票と党員・党友による地方票の合計で争われる総裁選のことです。
衆参の国会議員は1人1票を有し、合計で383票(9月17日の竹下亘衆議院議員の死去に伴い382票に変更)あります。一方、党所属国会議員票と党員・党友による地方票は1人1票ではありません。地方票は、各都道府県連が集計した得票数をドント方式で候補者に配分します。ドント方式とは馴染みが薄いのですが、議席を配分するために用いられる計算方式です。
地方票の合計が383票(同じく竹下亘議員の死去により地方票も1票減って382票に変更)です。つまり、国会議員は1人1票で合計が382票、地方票は党員・党友が110万人で合計が382票。総裁選は国会議員に厚く配分されています。どれだけ国会議員票を固められるのかで、大きく情勢が変わります。