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ネットで不評の渋沢栄一1万円札。実は「日本の凄い技術」が詰まっていた

コラム

紙幣「すかし」は江戸時代にさかのぼる技術

2000円札

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 そのほかにも偽造を防止するために、用いられている印刷技術はたくさんあります。広く知られている技術としては、「すかし」があります。渋沢の1万円札紙幣では、これまで以上に高精細なすかし技術が用いられました。

 紙幣にすかしの技術が導入されたのは、江戸時代にまで遡ります。各地を支配していた諸藩は、独自に藩札という紙幣を発行していました。この頃から諸藩でも偽札対策を講じていますが、1660年に福井藩が発行した藩札にはすかし技術が使われています

 明治新政府は、福井藩のすかし技術に着目。1882年に発行した紙幣には偽造防止として白すかしを採用しています。白すかしという技術があるので、当然ながら黒すかしという技術もあります。白すかしと比べて黒すかしは高度な技術ですが、それでも1886年に発行された5円紙幣から黒すかしの技術が実用化されています。

渋沢の1万円札紙幣を傾けると…

 当時と比べて印刷技術が発達した現代において、黒すかしは決して難しい技術ではなくなりました。しかし、黒すかしは1887年に制定された法律によって保護されている技術です。そのため、現在でも黒すかしを印刷物に用いると罰せられます。つまり、黒すかしは紙幣にのみ用いることが許されている技術といえます。

 E券からは、肖像の横にある楕円形の部分以外にもすかしが採用されています。それが、すき入れバーパターンと呼ばれる縦状の棒のようなすかしです。すかしに代表される偽造防止技術ですが、そのほかにも高度な技術がてんこ盛りなので代表的な技術を紹介しましょう。

 まず、手触りで真札か偽札かを識別できるように、紙幣はインクが盛り上がるように印刷されています。これは、深凹版印刷と呼ばれる技術です。また、紙幣に使う用紙も偽造防止に役立っています。かつて、紙幣は、ミツマタという木を原料にしていました。ミツマタは栽培量が少ないため、近年はミツマタにマニラ麻を配合しているようですが、いずれにしても市販されている紙では手触りやインキの載り方が異なります。

 また、紙幣を真正面から見るのではなく、傾けることで文字が浮かび上がる潜像模様、色が変化するホログラム、ピンク色の光沢を放つパールインキといった特殊な印刷技術も偽造防止に役立っています。ホログラムはE券にも使用された技術ですが、渋沢の1万円札紙幣では傾けると渋沢の肖像が動いて見えるようになっています

渋沢栄一と鉄道

渋沢栄一と鉄道

2021年の大河ドラマ主人公で近年注目を集める渋沢栄一。数多の企業を興し、日本の「資本主義の父」とも称される渋沢だが、多くの鉄道会社を立ち上げ、サポートもしていた!日本の近代化における鉄道の役割、単なる交通インフラではない、街を、産業を、経済を発展させるツールとしての鉄道の在り方を考える一冊

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