「2か月以上も自宅待機」若手建築家に聞く、ロックダウン下のベトナムの現状
学生時代の調査旅行から現地就職へ
山田さんが初めてベトナムを訪れたのは大学在学中。大学では建築設計を専攻し、所属する研究室ではヨーロッパやアメリカへの調査旅行が恒例行事となっていた。しかし彼の学年の行き先はアジア地域に。
当時はそれに(多少)悲観したそうだが、実際に行ってみると、自身が日本で学んできた繊細な建築とは真逆の、熱帯気候ならではの伝統的な工法、職人の手作業、無骨で力強い造形などに魅せられ、卒業後はベトナムの設計事務所に就職、後に独立することとなる。
「私が就職したVTN Architectsのボスで建築家のヴォ・チョン・ギア氏は日本で10年間建築を学び、ベトナムの建築業界を牽引する存在といっても過言ではありません。そこで5年間、経験を積み、2019年に建築設計事務所anettai(アネッタイ)を設立しました」
ウィズコロナ、アフターコロナでの施策は?
最近では各国のデザイン系のWebメディアでも山田さんの手掛けたプロジェクトが取り上げられている。
「コロナ禍では今まで実務作業に追われていた時間を、手掛けたプロジェクトを広報する時間に充てました。期せずしてスローになった日々の時間を有効に使っています」
ネットを活用して世界に発信できることになったことはもちろん利点だが、ベトナムのような成長国では、そう簡単にはいかない。オンライン上のカタログなど、当てにならないのだ。そのため建築設計においても、理想のものを形にするにはローカルとの繋がりが必須となる。
「コロナ禍中の今は多くのプロジェクトがストップしていますが、これは逆に投資としてはチャンスとも言えるでしょう。物件の賃料が下がり続ける中、アフターコロナを見据えて設計を依頼しようというクライアントは日本人・ベトナム人を問わず多いです。
そうした需要の中、現地の優秀な職人やサプライヤー、現場に精通している施工者など、日本の建築家は持ち得ないローカルとの繋がり、つまり“オフラインのつながり”を活かした設計提案をしていきたいです」