“イーロン砲”でビットコインが急降下?投資のプロに聞く、暗号資産のカラクリ
通貨そのものに根拠がない
そう聞いてしまうと暗号資産が非常に怪しいものに見えてしまうのですが……。
「では、私たちが日常的に用いている日本銀行券、つまりお金にはなぜ価値があるのでしょうか。これは暗号資産を含む全ての通貨の仕組みに通じることですが、原理的に言えば、この世の全ての通貨に絶対的価値の根拠を算出するモデルはありません。というのも通貨で保証されていることは、その通貨を発行している国で決済できる(≒納税できる)ということでしかないからです」
この話を聞いて筆者の頭に真っ先に浮かんだのは、ネットでもたびたび言及されるジンバブエドル。アフリカの小国ジンバブエは2005年以降、経済政策の失敗から、自国の通貨「ジンバブエドル」の価値が紙くず同然となり、現在は発行を停止されるに至っています。
「つまり通貨というのは、その通貨を用いる人々の通貨への信用を反映して相対的に価値が決まっています。人の信用という不確かなものを根拠にしているからこそ、通貨の価値は増減するし、為替市場というものが成立するわけですね。
では、例えば日本円や米ドルがある一定水準の価値を保っているのはなぜでしょうか? それは、その通貨で決済できる市場がとても大きく、またそれらが普及してからとても長い時間が経っているからです。感覚的な話で言えば、国が長い時間維持され続けていて、自分の生まれる前からその通貨が存在していて、みなが当たり前のように使っているからこそ、私たちは日本円を容易には疑いませんし、早々のことでは価値がなくなるということはないわけです」
暗号資産の価値は需給で決まる
ということは暗号資産の価値が非常に不安定なのは、とても新しい通貨なのでみんながまだ信用しきっていないということですか?
「その通りです。例えば、ビットコインは暗号資産市場の中で最も時価総額の高い通貨ですが、その大きな理由はブロックチェーン技術への信頼度以上に、ビットコインが暗号資産の中で最も古いことにあるでしょう。ビットコインができたのは2009年のことですが、生まれた当初は一部の愛好家を除き、全く目を向けられていませんでした。しかし、現在に至るまでの12年間一度も休むことなく取引が続けられています。その様子を見て、徐々に信頼が醸成されているからこそ、下落したとはいえ1ビットコインあたり400万円の価値を保ち続けているのです」
しかし、そうしたビットコインでもイーロン・マスクという、イチ個人の意見により暴落してしまいます。なぜそれほど価値が安定しないのでしょうか。
「それは、暗号資産が一般的な通貨以上に需給の影響を受けやすいからです。現状でまだ決済という明確な実需が大きくない暗号資産は、資産として皆が欲しがれば価値が上がり、皆が欲しがらなければ価値が下がります。つまり、何かポジティブなニュースによりある銘柄への注目が集まり、みんなが購入すれば価格は暴騰します。もちろんその逆も然りなので、暗号資産の価値は乱高下しやすいわけです」