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“ポスト古田”と言われた元野球選手が、球場で飲食店経営「挑戦しないことが一番良くない」

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相当な覚悟が必要だった外野コンバート

米野智人さん

画像提供:西武ライオンズ

 2011年のオフ、移籍先のライオンズでもさらなる転機が待ち受けていた。「これまでほとんど守ったことがない」という外野手へのコンバートだ

「渡辺久信監督(当時)に、『外野のほうがチャンスある』と言われました。しかし当然ですが、手薄とはいっても、結果を残さないと試合には出られないわけで、相当な覚悟が必要でした。でも一方では、キャッチャーを続ける自信を失い、行き詰まりも感じていたので、最終的には『野球を楽しくやりたいという想い』が決め手になりましたね」

 30歳を過ぎてのコンバートは異例だったが、春季キャンプでは「誰よりも練習した」という。確かな手応えと自信を掴み、無事に外野手として公式戦にも出場する。

「最初の試合はガチガチに緊張しましたが、1球捕れたら気持ちが落ち着いて、『次の打球も捕れそうだな』と思えるんです。『意外と守れるんだな』という手応えもありつつ、常に恐怖感やプレッシャーを感じていましたね。西口(文也)さんや、石井(一久)さんといったベテラン投手が投げている時は、特に怖くて……。『早く交代させてほしいな』と思ったくらいです(苦笑)」

やっと一員になれた気がしたホームラン

米野智人さん

画像提供:西武ライオンズ

 外野手として再起を図った米野さんが、バットで存在感を示したのが、2012年4月26日に行われたソフトバンク戦。この試合で、逆転満塁ホームランを放ったのだ。

「気負いや諦めもなく、ちょうど良い心境で集中を保てていたので打てそうな気がしたんです。2アウトだったこともあって、『ここで打ったらヒーローだ』と考えながら気負わずに打席に向かいました」

 米野さんが、「前に飛ばさなかったら、この勝負は終わり」と振り抜いた2球目のストレートは、スタンドに向かって勢いよく伸びていった。

「本当に奇跡でしたね。初めてライオンズの一員になれたような気がした瞬間で、僕にとっては大きな出来事でした。お店に来るファンの方にも『あのホームランを覚えている』と話しかけられたことは何度かあります。強烈な記憶を残せたことは本当に嬉しいです」

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