新卒で北海道網走に配属された28歳「流氷に感動したのは最初だけでした」
家でも外でも独りぼっち…
職場は現地採用の事務員を入れてもスタッフはわずか5人。彼以外は全員既婚者で車通勤だったこともあり、仕事終わりに飲みに誘われることも滅多になかったそうです。
「家に帰ってもやることがなく、残業して時間を潰そうにも定時で終わる程度の仕事量しかありませんでした。会社の人以外には知り合いなんて誰一人いない土地ですし、自宅ではYouTubeを見るかゲームをするだけの半引きこもり生活。コロナ禍の自粛生活同然の暮らしを5年以上も前から先取りしてやってました(苦笑)」
網走の近隣には大きな街もなく、旭川までは東京-静岡間とほぼ同じ200キロ、札幌に至っては東京-名古屋間に相当する340キロも離れています。そのため、滅多に行くことはなかったといいます。
「ただ、ちょっと郊外に出ると北海道らしい風景が広がっていて、次第にドライブはするようになりました。SNSで友達がコメントをくれるのがうれしくて道東の主要な観光スポットは赴任していた3年の間にほぼ全部回りました。いつも独りぼっちでしたけど」
知り合いゼロの土地での孤独な日々
大学時代から付き合っていた彼女がいましたが、地方転勤で遠距離になって半年後に破局。一方的に別れを告げられ、網走には一度もきてくれなかったそうです。
「赴任中、現地に来てくれたのは両親が1回、それと友達が恋人との旅行のついで会いに来てくれたのが1回あっただけ。東京には3か月に一度、出張で本社に行ってましたが日帰りか1泊してとんぼ返り。平日だからなかなかタイミングが合わず、盆や正月に帰省したときくらいしか友達と飲むことができませんでした」
オホーツク海沿岸部の冬の風物詩、流氷も昔は「死ぬまでに一度は見たい!」と思っていたそうですが、網走では毎年2~3月にかけて流氷が陸地に接岸。海沿いを車で走っていると黙っていても視界に入るため、感動は最初のうちだけで次第に飽きるようになったとか。
「砕氷船っていう流氷観光用のフェリーにも何度か乗りましたが、周りは家族やカップルだらけで自分だけひとり。俺、こんなところで何やってんだろうって孤独感にさいなまれちゃって。春~秋はまだいいんですけど、冬は基本的に天気がどんよりしているからメンタル的にヤバかったですね」