現在も「地球平面説」を信じる人は多い。陰謀論が危うい理由をダースレイダーが語る
2020年アメリカ大統領選の期間中、Twitterなどで頻繁に目にした「陰謀論」。こういった陰謀論が広がった未来にどのようなことがおきるのか?
東京大学中退の経歴で、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)の連載「時事問題に吠える!」では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。
前回に引き続き陰謀論について、ダースレイダーが解説する。
2020年アメリカ大統領選で流された陰謀論
共和党のドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領が争った2020年の米大統領選では、敗北したトランプ陣営が「不正選挙」だとして50件以上の訴訟を起こしたのですが、証拠が出ることはありませんでした。
トランプ前大統領が「自分の名前が書かれた投票券が川に捨てられている」という話をしたときに、もしその証拠が出てきたら、大統領選がひっくり返る可能性はあると思いましたが、当然ながら、そのような川は発見されませんでした。そして、あれだけ言われていた組織的な不正選挙をうかがわせる証拠も一切出てきませんでした。
ちなみに「証拠はあった」と主張する言説や動画はネットにたくさん流れましたが、証拠というものは、第三者がさまざまな角度から検証し、合理的に疑い得ないものが、裁判所とかで認定されて初めて「証拠」になるのです。「証拠が出てきていない」というのはそういうことで、僕は直感的に「この言説・動画はおかしいだろう」と言っているわけではありません。
不正選挙の証拠は一切出てこなかった
陰謀論的な物語構造では、事実のように見えるパーツが用意され、それを物語として繋いで行きます。ネットに溢れる画像などはこうしたパーツとして物語を補強する働きをします。その結果、「司法だって嘘だ」「すべてのマスコミが嘘をついている」という考え方になる人もいます。
すべてが嘘だという答えが与えられると、いろんな物事がストンと腑に落ちるようになります。「自分が見つけた真実だけが本当なんだ」という答えが与えられてしまえば、非常にシンプルでわかりやすくなるからです。
ただし、世の中にはさまざまな人が住んでいますから、さまざまな人が合意して、これは確かな証拠だと認めたものをベースに議論していくというのが近代社会です。科学的に検証し、ほかの人が同じものを同じように見ても、同じ結論にたどり着くはずですが、こういったものは不正選挙に関しては一切出てきませんでした。