結局、マスクはどの程度コロナ予防に効く?東大の研究で明らかに
ワクチンを過信しすぎるのも危険?
――マスクを着用するだけで、感染の可能性が10%未満というのは、すごいですね。
北村:ハムスターを使った実験でも、マスクの着用の効果が証明されています。ハムスターにマスクをつけるのは不可能なので、飼育ケージに不織布を張った実験ですが、10%未満までにウィルスの伝播がブロックされることが証明されました。
――人の感染で気になるのは、ウイルスをたくさん放出する人がいた場合、マスク着用の効果の数値が変わるのではないかということです。
北村:日ごろから声が大きい人が近くにいる、さらに歌を歌うなどの場合は、効用が低くなります。また咳より飛沫が多く飛ぶのがくしゃみです。ですから、マスクだけでなく、プラスアルファーの防御効果が必要になります。マスク+ソーシャルディスタンス、マスク+アクリル板、マスク+静かな声で話すなどをこれからの季節に推奨したいです。
また先ごろ、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発する新型コロナワクチンの臨床試験の暫定データで、90%以上の有効性が示されたと発表がありました。ワクチンだけで100%感染を防げるわけではないので、ワクチンだけに依存するということはやめたほうがいいでしょう。マスク着用によって、90%以上感染をブロックできるわけですから、マスクをしている私たちはワクチンを打っているのと同じということです。
電車の中でクラスターが発生しない理由
――では電車内でこれまでクラスター感染が起こったことが報告されていないのは、マスクの着用を徹底してきたからだということですか。
北村:おそらくその通りだと思います。70~80%の人がマスクをしていると流行拡大を抑えられますが、それでも小さな流行がありえます。言葉を変えると、電車の中で30%の人がマスクをしていないと、クラスターが起こる可能性があります。
他の車両では起こらないけど、一部の車両で30%以上の人がマスクをしていない場合でも、クラスター発生の可能性があります。もちろん、電車内の消毒やこまめな換気といった鉄道職員の努力、あるいは時差通勤などの効果も少なくないと思いますが。
――では、これからの季節が、インフルエンザとコロナの両方の流行が懸念されますが、感染防止の対処法を教えてください。
北村:インフルエンザの予防にとって一番大事なことが手洗いです。一方、コロナはマスク+ソーシャルディスタンスが重要になります。
とはいえ、みなさんこれまでもコロナ予防のために、手洗いやマスク、ソーシャルディスタンスの徹底をこまめにやってきたと思います。そういった習慣、特に手洗いを継続していただければ、今年のインフルエンザの患者数を減少するだろうと予想されます。
<取材・文/夏目かをる>