Adobe Flashが2020年で終了。使い続けるとトラブルは起こるのか
かつて盛んに使われたAdobe Flashが、2020年いっぱいでその役目を終えることになった。2021年以降、Adobe Flash Playerのアップデートは行われなくなる。
サポート外のコンポーネント(ソフト)を利用し続けると、セキュリティ面で多大なリスクを抱えることになる。したがってユーザー側でも、「2021年1月1日から先、Flashはいっさい使えなくなる」と割り切ってしまうのが良いだろう。
そこで今回は、Adobe Flashの歴史を簡単に振り返りつつ、Flash終了でインターネット空間がどう変わるのかを考えてみたい。
そもそもFlashって何?
スマートフォンやタブレットでインターネットデビューした層には、あまり聞き馴染みのない名前かもしれない。ほとんどのスマホはFlashに対応せず、知る必要もなかったからだ。
しかしFlashの歴史は長い。1996年にアメリカのIT企業「Macromedia」が提供を開始。2005年にはライバル企業のAdobeがMacromediaを買収し、現在の「Adobe Flash」となった。
これを使うことで、ブラウザ上で簡易なアニメーションを再生できたほか、動画をストリーミングすることも可能になる。YouTubeや「ニコニコ動画」は、このFlash技術を使って躍進した。
2000年代までの動画配信サイトでは、Flash以外にも「RealVideo」や「QuickTime」という規格が用いられていたが、今日ではどれも廃(すた)れている。Microsoftが開発した「Silverlight」も早々に失敗し、手仕舞いをしている途中である。
iPhoneがFlashを終わらせた
2000年代に栄華を極めたFlashだが、潮目はすっかり変わり、今ではほとんどのサイトが代替技術の「HTML 5」を利用している。FireFoxやChromeなど、主要なブラウザではFlash Playerを利用しないことが推奨されており、Adobeもその継続を諦めた形だ。
Flashが終焉に向かうきっかけのひとつとなったのが、iPhoneの登場だ。
故スティーブ・ジョブズは、ユーザーの要望が多かったにもかかわらず、iPhoneのFlash対応をかたくなに拒んだ。当時のFlashはMac OS Xのセキュリティに悪影響を与えており、同様のリスクをスマートフォンに持ち込みたくないというのがその動機だったとされる。
その後は2010年代を通じて、HTML5への移行が進んでいく。現在ではFlashはすっかり過去のものとなった。今日のインターネットユーザーの大半は、「Flash終了」を難なく受け入れられるだろう。
特定の企業の製品に依拠するFlashよりも、パブリックな規格として制定されたHTML 5のほうが開発が自由で、なおかつセキュアである。iPhoneにおける“脱・Flash”は、ジョブズの“先見の明”に数えられるべきだろう。