2億円赤字を乗り越えて…「日本発のビジネスチャットツール」誕生秘話
失敗で得た学びを活かした
そんな“敗戦処理”が続くなかで山本氏が新規事業として提案したビジネスチャット事業。当時、社内では「Skype」で業務を行っていたが、何かと不便に感じる点が出てきて、この事業を思いついたとか……。
「全員に反対されました。幸い社内ツールを内製する文化がもともとある会社で、『やってもいいけど1人でやって』ということになりましたが、僕も逆の立場なら反対したと思います。社運をかけて大失敗したプロジェクトで得た学びはChatworkに活きていますね。やはり社内のそれぞれの立場の意見を取り入れて合議制でモノづくりするとダメというか。会社としてはIT活用コンサル事業で手堅く稼ぐ方向性でしたが、そこに背を向けて1人でChatworkのコードを書いていましたね」
当初は集客に苦労したChatwork
Chatworkは事業化後も先行投資がかさみ、利益を出す事業に成長するまでもかなりの綱渡りだったそうだが、積極的に記事広告なども打った結果、テック界隈で火がつき、口コミでユーザーが徐々に増えていったという。
「チャット自体は昔からあるので古く見えたこともあり、集客には苦労しました。当時はFacebookやTwitterなどのソーシャル全盛期で、ビジネス向けコミュニケーションツールも社内SNSがもてはやされていた時代でしたから。しかもChatworkはほとんどの機能が無料プランで使えるので、数百円のサービスを積み上げ、人件費をペイするまで果てしなかったです。
ただ、そこはパッションというか、企画が優れていてもほとんどは外すんですけど、そのなかでどれだけ推進していけるかって、結局、やる人のモチベーションや行動量だったりします。仮に企画が多少ダメだったとしても、思いがあって発信し続ければ、何か起きるということなのかもしれませんね」
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<取材・文/伊藤綾>