ヤクルト戦力外から上場企業の管理職に。27歳元プロ野球選手を救った言葉
同期の山田哲人選手に救われる
「入社して1年が経っても1件も契約が取れませんでした。中には元プロという経歴に興味を持ち、話だけは聞いてくれるお客様もいましたが、『面白いね』と言われておしまい。気づけば、次の新入社員が入ってきて販売実績ゼロの先輩になってしまいました。結果が出ている同期もいて、悔しくて夜も眠れない日もありました」
実りのない商談ばかりで、心は折れる寸前。そんな時、友人から「飯に行こうぜ」と連絡が入った。ヤクルトの同期入団の山田哲人選手からだった。
「哲人とはものすごく仲が良くて、プロを辞めた後も連絡を取っていました。僕が暗い顔をしてご飯を食べていたら、『試合を見に来いよ。俺は野球で頑張っている姿しか見せられないから』と励ましてくれました。その時に『野球と会社員の世界は違うけど、どちらも人を喜ばせる仕事ということは同じだろ』とも言われ、ハッとさせられました」
そして、入社から1年2か月後、ついに初めての販売契約を結ぶことができた。
今はお客様と向き合う日々が楽しい
「哲人の励ましもヒントでしたが、そのお客様と契約を進める中で、お客様に喜んでもらうために心から行動すれば、必ず成果がでることに気づきました。不動産は長期のお付き合いになります。契約を取ろうとするのではなく、お客様としっかり関係を築くことが大切だったんです」
そこから又野さんの快進撃が始まった。その月だけで3件の契約を取り、社内で一躍脚光をあびる。順調に販売実績を上げ、翌年には課長代理に昇進し、同期の出世頭に躍り出た。現在は海外事業部に異動し、課長として海外の顧客を任されている又野さんは「プロに入れたのは、いい経験だったと改めて感じています」と振り返る。
「この会社に入ったのは、土橋さんの言葉があったから。心が折れなかったのは、哲人の励ましもありましたし、野球でメンタルを鍛えられたおかげでもあります。全部繋がっているんですよね。プロでは大成しませんでしたが、まだ会社員として成功したとも思っていません。プロでクビを切られて良かったのかもしれないし、良くなかったかもしれない。答え合わせはこれからですが、今はお客様と向き合う日々が楽しいんです。管理職になってからできた部下と一緒に結果を出すために、仕事に取り組む。とてもやりがいを感じています」
<取材・文・撮影/中野龍>