小池百合子都政が“やらなかったこと”とは?カオスすぎる東京都知事選を斬る
現職・小池百合子氏が何をしてきたか
ダースレイダー:ちなみに現職の人柄、仕事ぶり、考え方がわかる参考書があります。ノンフィクション作家の石井妙子氏が書いた『女帝 小池百合子』(文藝春秋)です。この本は、現職をチェックしてから都知事選に挑むための参考書として、大変推薦したい一冊です。
これを読んだうえで東京のこれまでの4年間、オリンピックに対してどう取り組んでいたのか考えてみる。暑さ対策とかしてたけど、編み笠みたいなものを被った人を広報に使っていたり、朝顔を植えようとか、いろいろなアイディアが出てたと思います。
その中で僕がずっと注目していた公約が「満員電車ゼロ」というもの。確かに満員電車は嫌ですから。世界的に有名な東京の満員電車をどう改善するのか、非常に注目していたんですが、これに対して、小池氏が早い時期から出していた案は「2階建ての電車を作ろう」というものでした。これは今のところ走っていません。ちなみに、小池氏がなぜ満員電車をなくそうとしているかというと、学生のころ、満員電車に乗っているときに、ぎゅうぎゅうすぎてつい降りる駅を間違えてしまい、それがトラウマになっているらしい。それが嫌すぎて、結果アラブまで行ってしまいました、みたいな。
ここで『女帝 小池百合子』でも話題になっているカイロ大学首席卒業をめぐる経歴詐称疑惑。首席というのはどうも本人の勘違いで、当時の先生に「非常に良い成績」と言われてうれしくなって著書に書いてしまったらしい。そんなことあるんだと。僕は東大中退なんですけど、“首席で中退”したことにしようかな? なんて思ったりしますが。
現時点では、本人は「カイロ大学を卒業しましたよ」と言って、大学側も正式に卒業したと言っている。大学側がわざわざ公式に言ってくれるって、なんて優しい大学なんだと思いますが、その卒業証書が公開されてもなお、経歴詐称疑惑が出ています。
小池氏が“やらなかったこと”にも目を向ける
ダースレイダー:日刊ゲンダイの記者さんがTwitterで「肩幅と顔のバランスおかしくないですか」とか、「裏から見ると写真が合成されているように見える」みたいな検証をしていて、これも科捜研みたいで非常に面白いので見てみるといいと思います。
少なくともそういった小ネタ以外にも「そもそもこの人って何をしたんだっけ」と考えてみてください。「バンクシーのネズミの絵の横でしゃがんで写真を撮っていたな」くらいしか、僕は思いつかなかったですけど。
関東大震災のときに犠牲になった在日朝鮮人の方の追悼式典では毎年、歴代都知事が追悼文を送ってきましたが、小池氏は就任の翌年から送っていません。これは非常に問題です。今までの都知事は追悼文を送っているので、保守という視点からも疑問です。
自分たちがどうのような歴史をたどってきたのか、東京が何の上に成り立っているのかということを考えたときに「二度と繰り返してはいけない」という言葉を軽々しく使う人が多いですが、本当にあってはならないことが起きてしまったのが、関東大震災時のデマによる朝鮮人の虐殺事件です。これに対して向き合わない、なかったことにする態度を取ったのは東京都知事としてやってはいけないことだと僕は思います。その後のネットでの公開討論でも虐殺については「さまざまな事情」という表現を使って、直接言及するのを避けています。
メディアで取り上げられない候補者の存在
ダースレイダー:先ほど言ったように、選挙は300万円の供託金を支払って全員が同じ条件でエントリーしています。22人いるのに、どうも大手マスコミを見ると“主要候補5人”みたいな言い方をして、まるでその人たちしか選挙をやっていないかのような錯覚を招いている。フリーランスライターの畠山理仁氏は、メディアに取り上げられないような候補にスポットを当てた『黙殺』(集英社)という本を出しています。
近所の選挙掲示板にはポスターがずらっとあるけど、案外全員揃っていない。なぜなら東京都内に1万4000か所ほどある全掲示板に貼るには相当の資金力、人手がかかるから。これがなかなか賄えない。既に300万円払っているので、スタッフを雇う余裕がない候補もいるわけで、なかなか全員のポスターが揃うことはありません。
でも、都知事選というゲームにエントリーしたからには22人候補それぞれの政策を見比べていただきたいと思います。僕の娘が小学生なのですが、小学生の間で話題になっているのはどの候補かと思ったら、国民主権党でした。今回の都知事選のために作られた政党で、出馬したのは平塚正幸候補。「コロナはただの風邪」と、大々的にポスターに掲げていてですね……。この宣言、子供とって非常にキャッチーなんでしょうね。