不動産業界を捨てて「やりがい」を求めた29歳。年収半減でも幸福な理由
偏差値60以上の国立大学の法学部を卒業した池上直人さん(仮名・29歳)。
ゼミの先輩に誘われて不動産に入社。ところが高額の年収をもらった池上さんは悩みます。その後、別の会社に転職することになるのですが……。
いったい何が起こったのでしょう?
不動産会社に就職。いきなり年収700万円に
先輩に誘われて不動産に入社した池上さんは、まず営業部に配属されて、法人を担当しました。
「都心の一等地を扱う法人が多く、中には海外で大きな利益をあげる企業のプロジェクトにも参加。そのため新人なのに、いきなり年収が700万円。喜びよりも不安が広がりましたね」
長身ではきはきと受け応える池上さん。彼と対面した10人中8人ぐらいが好青年という印象を受けそうです。
大学のゼミの先輩が「お前ならきっとお客に好かれるぞ」と見抜いた通り、営業成績は同期でトップ。ところが高収入をもらうと、モチベーションが上がらなくなったそうです。
「この仕事を一生続けるのかと自問自答しました。不安が広がると、自分にとってやりがいのある仕事は何かを考えました。それが分かったときに、誘ってくれた先輩に申し訳ないけど、退職するしかないと思いました」
ストレートで司法試験に合格。弁護士に
もともと弁護士になりたかった池上さん。
「ところが、中学のときに両親が離婚してしまい、それから男手一つで育ててくれたオヤジが、大学生入学してすぐにリストラされたんです。しかも交通事故が原因で足が不自由になって、オヤジを安心させるために、弁護士を断念したんです」
大学を卒業してすぐ働き、父親を養おうとした池上さんでしたが、しかし、それを聞いた父親は、激怒します。
「弁護士を断念して、高収入の仕事に就いたことを僕の恋人から聞いたそうなんですが、『親のことよりも、自分の人生を悔いなく生きなさい』と激励してくれたんです。
オヤジの言葉をそのまま先輩に伝えると、先輩も応援すると言ってくれました。そのとき、何が何でも弁護士になると決めましたね」
1年で不動産会社を退社した池上さんは、2年間ロースクールで学び、ストレートで司法試験に合格。
「研修ののちに、有名な事務所でインターンとして働き、事務所から就職のオファーをもらうほどになりました」